英国の3チャンネルITVの刑事ドラマWhitechapelを見た。

世界中どこにでもあるバディ物なのだが、東ロンドンを舞台としている影響もあって、英国らしさが溢れ出ている。
いかにも育ちの良さそうなエリート警部補ジョー・チャンドラーをルパート・ペンリー=ジョーンズ、たたき上げの初老の巡査部長レイ・マイルズをフィル・デイビス。

初めは反発しながらチームを組み、ロンドンの古典的殺人事件「切り裂きジャック」のコピーキャット殺人をはじめ、難事件を解決していく。捜査中に情報提供者と話すときに向けられる「この二人はカップルか?」という疑いの眼差しを常に意識し、懸命に否定し続けるところが、『相棒』のような日本の番組と大きく異なるところだ。
この点では英国の古典であるシャーロック・ホームズとワトソン君の伝統をしっかり受け継いでいる。

主役のペンリー=ジョーンズは先のブログでも触れた『ケンブリッジ・スパイ』で売り出し(と言っても全然印象薄かったけど)、9.11後のテロリストとの戦いでMI5の活躍を描いた『SPOOKS』でブレイクしたブロンドの正統派二枚目。
この彼がWhitechapelではコミカルで、超几帳面(meticulous)なばっかりに、自分よりだらしない女性(ほぼ全員)との関係がうまく行かない独身貴族を好演している。この警部補は部下が帰宅した後、警察署の机の上を片づけたり、ゴミ捨てをしてしまうのだ。

一方の巡査部長のマイルズは、ジョーがお似合いの女性に会うたびに応援し、時には電話番号まで聞き出して教えるという世話女房ぶり。
だが、今回はジョーは彼と同レベルで几帳面な女性警部補とうまく行きかけていたのに、マイルズのベテラン・デカの勘を信用したせいで、彼女の機嫌を損ねてしまうという、「視聴者もがっかり」な展開だった。
SPOOKSの時の超人的な脱出能力、頭の回転の速さと比べると、Whitechapelの不器用ぶりはずっとラブリーで親しみが持てる。このギャップが妙に可笑しいので、毎週楽しみである。

ところで、Whitechapelの直前につけていた英語版アルジャジーラ局のエジプト革命のドキュメンタリー『Arab Rising』では、なんとアラブ人の学者が「CIAとMI5はこっちでゲシュタポのような振舞いをしている」と証言。
近頃、Tinker Tailor Soldier Spyなど愛国者(パトリオット)的なMI5ものに熱中していたので、すっかり洗脳されてしまっていたようだ。この証言ですっかり目が覚めた。アルジャジーラは、とうとうオーナーが王族の一人に代わってしまったので、報道体制が変わるのではないかと言われている。これまでは報道の公平さを保つために王族がオーナーになるのは避けられていたらしい。ますます反欧米になるということだったのか、と今日はじめて気が付いた。