この2週間、リキと私の体調が優れず、ほとんど練習出来ていない中、ついにその日がやって来てしまいました。

競技会自体は22日からの開催でしたが、仕事の都合で22日は参加できず、その日の夜に現地入り。
自クラブの懇親会に顔を出して、翌日の試合に備えて、すぐに寝ました。

集合6時半。
会場の中島トニアシュタールに到着すると、前日からの雨で馬場はグチャグチャ。いや馬場だけでなく場内至る所がグチャグチャな状態でした。

こんなんでちゃんと走れるの?
躓くどころか、足抜けなくなるんじゃないか?と思うぐらいにぬかるんでいて、奥の駐車場に行くまでにスリップしまくり。車もドロドロです。

しかも、寒い…。昨日よりは良いようですが、気温15℃と言う割には、冷たい雨で芯から冷えてくる感じでした。

今回の競技会には、クレイン茨城からは馬場、障害合わせて40人以上が参加。馬も23頭連れてきています。
超大所帯。厩舎一列まるまる全てがウチの馬。
壮観です。

馬場競技は朝イチの7時30分開始。
私の出場するA2課目からスタートします。我がリキアイ調教チームは4走します。

事前に伝えられていた出番から、当日になって順番が大幅に変更となり、私はリキ君としては3番目の出場。全体では13番目です。
途中休憩と馬場整備が入った後、後半の初っぱなになっていました。

競技が始まり、自分の出番までは私は馬付きとして、出場者のサポートをします。
馬場はラッキーなことにインドア。
これなら馬場の悪さを気にすることはありません

リキアイチームはH子ちゃん、Oさんと多少の失敗はあったものの、無事競技を終えて、休憩となりました。

一旦リキ君を厩舎に返してリフレッシュさせます。

しかし、元々動きたがらないリキ君は、これで競技モードのスイッチが切れてしまうのは分かっていたので、後半最初の自分の出番前にはK村氏の下乗りも含めて、充分に馬を作る時間が必要だと思っていました。
後半の開始時間より早めに待機馬場に入って、やる気モードのスイッチを入れかなくちゃ!

しかし、厩舎から待機馬場に連れて行く時に、何となくの流れで私がリキ君に跨って移動してしまいました。
本来、ここで指導員であるK村氏が乗って、待機馬場で下乗りして馬を作ってくれるはずなのですが、何を思ったか私が乗ってそのまま待機馬場入り。

K村氏からも特に何もなく、
「馬場入ったらすぐ速歩させて」
との指示があっただけ。
ご指示通り、速歩させて蹄跡を回るところから始めました。

寒いとは言え、もう2走していますので、それほど重い感じではないかな。
これなら、待機中の作り方次第で何とかなるかも。

そう思っていると、「13番 Kazuhiko選手、待機お願いします」

え?まだ蹄跡一周もしてないよ?

進行の兼ね合いなのか、20x40の馬場脇の狭い待機スペースに移動させられました。
ここで、再び運動しますが、速歩は出ても駈歩が出ません。出ないのではなく、私が出せてないのか?

「鞭入れて!出し直して!」
心配したチームメイトのH子ちゃんが思わず声を掛けてくれました。

鞭を入れて出し直し。今度は駈歩しましたが、すぐに止まります。
ダメだ、これ…。

まともに運動しないうちに入場のブザーが鳴り、中央線へ。
速歩がすでに止まりそうです。
真っ直ぐ入れたかどうかも、全く記憶にありません。この時点で、ヤバイと言う思いで意識が動かすことにしか行っていませんでした。

敬礼から発進。斜めで少しでも前に出そうと鞭を入れてみますが効果なし。
三湾曲も図形としてはキチンと書けたと思いますが、トボトボとしか速歩できない。
止まられるのが怖くて、手綱も全く持てていません。タルタルに緩い手綱のまま、コンタクトも何もあったもんじゃない。

その後の長蹄跡でも状況は変わらず、常歩パートへ。
頭なんて下がるわけもなく、競技の常歩ではなく、単に歩いているだけ。手綱を思い切り伸ばした状態で軽くコンタクトを取ろうとしましたが、全く無意味。

こうなったら、駈歩パートで挽回しなくちゃ。
しかし、リキ君が苦手の右手前。
出ないよなあ…出なかったらどうしようかなあ…と思いつつ、C点から駈歩!

やっぱり駈歩しません。
輪乗り1/4ぐらいまで速歩。再発進を何度か試みますが、一瞬駈歩して終わり。
輪乗りの1/8ぐらいしか駈歩になりませんでした。
そこから長蹄跡に出ますが、はじめの半分は駈歩させられたものの、隅角前で速歩になり、そのまま斜めまで、ずっと速歩のまま。

もうこの時点で完全に諦めました。
もういいや。
ってか、このまま棄権したい。
乗っていること自体が恥ずかしい。
そんな気持ちになっていました。

左手前の駈歩。
まあ、どうでもいいや。出なきゃ出ないで。
案の定、発進だけはちゃんとしてくれたものの、輪乗りの途中で速歩に。
そのまま出し直しもせず、後はとにかく経路を終わらせる事しか考えていませんでした。

長蹄跡を速歩しながら、マジで泣きそうになりました。
自分が情けない。ちゃんと練習してないし、待機馬場でも何も準備出来てないし、こんなんじゃ競技会出る資格ないよな。

隅角を通過して斜めに入ったところで、ついにリキ君常歩に。そして中間点手前で止まりました。

ああ、動かない…。
もう止めようか。でも、あとちょっとだしなあ。
3秒ぐらい止まったまま、頭の中を色々な思いが巡ります。

とりあえず、鞭を入れると、またゆっくりと歩き出しましたが、もう何も考えられない。

あれ、今何やってたんだっけ?
この後、どう言う経路だっけ?

私の頭の中も真っ白になってしまっていました。

頭の向いている方向にトボトボと常歩で歩いているうちに、あ、最後のパートだったと気が付き、C点から速歩させましたが、中央のX点に曲がるあたりから常歩に。

せめて最後ぐらいはキレイに終わろうよ。

しかし、速歩にすることすら出来ず、そのまま終了地点まで行っておしまい。
最後の敬礼もしたかどうか、覚えてません。

とにかく早くこの場を去りたい。
それしか頭にありませんでした。

退場すると、K村氏が
「体調悪いの?腰?大丈夫?」
と声を掛けてきました。
あまりの不出来にK村氏は、私の身体の調子がおかしいのかと思ったようです。

そう言うこっちゃないんだよ。
何も話しかけないで。

馬付きしてくれていたH子ちゃんが
「途中で諦めたでしょ。見ててわかったよ」

てことは、審判にもやる気を失って投げやりに乗っているのがわかったでしょうね。

もう何も言えねえ。
北島康介の名言が逆の意味でどハマりな心境でした。

馬を降りて、次のTKさんに交代します。
私の競技はウオーミングアップにもなっていないので、K村氏が乗り替わって作り直し。
直すと言うか、やる気を出させるための下乗りですね。

はあ…終わった。マジ、オワタ…(T . T)

その後、最後の走行だったTKさんは見事な騎乗で、60%出るかと言う出来。
最終的には59.8%で5位入賞となりました。
Oさんも57.5%、H子ちゃんも56.9%。皆さんよく頑張りました。

私は結果も見たくなかったので、何も聞かずに車に戻りました。
早く正装脱ぎたい。この格好していることが恥ずかしい。
車の中で着替えて戻ると、結果の画像ががLINEで送られてきました。

見たくないって言ってんの!

でも、現実をしっかり受け止めなくてはと、画像を見ると

当然、私の名前は一番下。

恐る恐る右に目をやると飛び込んできた数字は、39.296%!

出場者中、ただ1人の30%台。
こんな点数ってつくんだな。
審判の1人は37%をつけていました。
まあ、あれじゃ点数付けようがないよな。

もう競技会出たくない。
これじゃクラブの顔も潰すしたわけだし、何と言ってもリキ君の汚点になってしまいました。

練習不足、準備不足。
出たくないと言う以前に、出る資格すらありません。
ごめんなさいと言うしかありません。

リキ君がいたからこのクラブに入って、彼と競技会に出る事を目標にしてきて、その願いが叶ったと言うのに、結果的にはこのザマ。

何でもっとちゃんと練習してこなかったのか。
なぜ待機馬場にもっと早く出て馬を作らなかったのか。
なぜ途中で諦めてしまったのか。

競技どころか馬に乗る資格もないんじゃないか。
もう乗馬もやめちゃおうか。
家族中に反対されながら続けていたところで、結果が出せないんじゃ、高い金払ってる意味もない。

競技が終わってから、ずっとそんな事を考えていました。
完全に負のスパイラルに陥って、考えるのは全て悪い方向ばかり。
あまりの落ち込み具合に、周りの皆さんが声を掛けてくれて励ましてくれましたが、それすら申し訳なくて、1人離れて雨の中でしばらくボーッとしていました。

その後は他の出場種目の馬付きをして気持ちを紛らわせつつ、K村氏も気遣ってか、自分が36%を出した時の話をしてくれたりしましたが、どうにも気持ちが戻ってきませんでした。

午後は障害があったり、総合があったりして、皆さん盛り上がっておりましたが、私は全く乗り切れず、リキ君の馬房前で戯れたりして過ごしておりました。
しまいには肩をガッツリ噛まれたりもしましたが、それでも怒る気力すら湧かず、ボンヤリと雨に濡れていました。

17時過ぎに競技会も終了し、馬を積み込んで、帰路へと着きました。

家に着いてから、師匠にLINEで報告。
すると、わざわざ電話をくれて、厳しくも温かい励ましを頂きました。
開口一番、笑い飛ばしてくれたのが、とても救われました。
師匠、いつもありがとうございます。

調教チームのメンバーからも、初めての競技会だから!とか私なんて全部速歩で回ったことがあるよ!とか慰めの言葉を頂きました。
みんな、優しい…。そんな皆さんに余計な気遣いをさせてしまうことが申し訳ない。

家族にどうだったと聞かれた時には、"ダントツ1位!ケツから!"と笑い飛ばして見せたものの
「上手くもないのにクラブに騙されて金を使わされているだけだ」
と妻に罵られた時には、流石に頭に来て、そのまま布団に入り込んでふて寝しました。

一晩寝て随分と回復したのですが、これを書いているうちに、またあの時の思いが蘇ってきて、何となく気持ちが上がりません。

しばらく馬から離れてみようかなとも思っています。
このまま乗馬をやめてしまうことはないと思いますが、競技は当分出なくて良いかなと思っています。
リキ君に申し訳ないし、お金ももったいないのですが、しばらくお休みして気持ちを切り替えないと、乗ろうと言う気力が湧いて来ないんじゃないかと思っています。