読み終わりました。

伊坂幸太郎『グラスホッパー』

とっても読みやすく、比喩表現がとても違和感なくスーッと読み込むことができる作品でした。

と同時に最後の裏切りというか、種明かしというか、こういう終わらせ方っていうのも残酷だなぁと独特な終わり方が印象的でした。

ここからはちょっとネタバレになりますが、ちょっと感想を。

最後の鈴木が見た回送電車のくだりは初めに出てくる信号の長い点滅とリンクしていることは理解できました。

つまり、中盤でホームレスの田中が鯨に伝えた「信号はたいがい見始めの契機で、列車は目覚めの合図だったりします」という原則に従えば、物語の早い段階で、つまり寺原が死ぬより前の段階で鈴木は幻覚を見始め、最後の回送電車が過ぎ行く段階では目覚めの直前であると考えられます。

つまり、この小説にまだページが続いているのであれば、この電車が過ぎ去ったあと始めて幻覚から目覚めるわけで、本当の物語はこの先からむしろ始まるといっても良いのかもしれません。

場合によっては、冒頭に戻って車の中でまだ比与子の隣に座っている段階なのかもしれません。

まぁ幻覚で全て片付けられちゃうと元も子もない話になっちゃうんですけどね(笑)

まぁ、この小説が3人の視点で描かれているということでは、鈴木の見ている世界には少なくとも3人分の別々の意思が存在しているわけで、鈴木一人の頭の中に描かれている幻覚の世界というのとも違うと思います。

スパッとした答えは1回読んだだけではうまくつかめなかったですが、いつかまた再読してみようとも思います。

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