子育てと職場での部下育成は、全然関係ないと思われるかもしれませんが、根本的な部分では多くの共通点があります。私は、以前に出版した拙著『双子を東大に入れた父が教える、頭のいい子の育て方』で、子育てで大事な3つのキーワードとして、「安心感」「好奇心」「自己肯定感」を挙げました。ここでは、この3つを切り口にして考えてみましょう。

まずは、「安心感を与えること」です。
子育てにおいて、子どもが安心して生活することは、一番大事なことだと思います。子どもは大人に比べて、体も小さく知識も不足しています。そのため、親が見ていてくれる、困ったら親が助けてくれる、失敗しても怒られない、という安心感があればこそ、子どもは思いっきりやりたいことに取り組むことができます。逆に不安を感じる子どもは、興味を持っても新しいことに臆病になり、やりたいことができずにあきらめてしまいます。
職場においても同様で、自分の意見を上司がちゃんと聞いてくれる、困ったらサポートしてくれる、という安心感があればこそ、部下は積極的にやりたいことにチャレンジできます。最近ではビジネスでも「心理的安全性」という言葉が注目されていて、心理的安全性の高い職場作りとか、心理的安全性の高い会議運営が求められています。そして、部下が安心感を持って業務遂行できる、そのようなチームが高いパフォーマンスを上げることが分かっています。
次に「好奇心を潰さないこと」です。
子どもの好奇心を潰さないことも大事なことです。幼児であれば、道ばたの石や葉っぱにも興味を示します。忙しいパパ・ママは「何やってるの、早く行くよ」と子どもの手を引くと、だいたい子どもは泣き出します。子どもは「丸くてきれいな石!」「なんでこんな色なのかな?」などと自分なりに考えて、「いいものを見つけた」と嬉しいはずです。それを無視されると悲しくなって泣き出します。
そういう時は、3分間だけ待って見守ってあげた方が、結果的に早く歩き出します。小中学生になっても好奇心は大事なので、子どもが突飛なことを言っても頭ごなしに否定するのではなく、なぜそう考えたのかよく話を聴くことが大切です。
職場においても同様で、優秀な部下ほど好奇心が旺盛で、世の中に対するアンテナが高く、新たなことを提案したり、挑戦しようと考えます。上司としては、どんな意見でも否定・非難しないで、まずはよく話を聴いて共感し、前向きな姿勢で質問して、本人に考えさせることが大事だと思います。そうすることで、部下の仕事に対するモチベーションも向上します。
そして「自己肯定感を上げること」です。
これを伸ばすには「ほめて育てる」ことです。子育てでは、近年ほめて育てることが注目され、賛否両論ありますが、これは子どもを甘やかすという意味ではありません。社会生活上いけないことは、その理由をよく説明して、理解させてやめさせます。親としては、常にほめられそうなことを見つける意識を持って子どもに接し、具体的にほめ言葉をかけます。そうすることで、子どもは「やればできる!」という自信を持ち、また新たなことに挑戦しようとします。そして、実際にできるようになります。
職場においても、部下に対して同様のことが言えます。管理職研修の中で、部下に言うほめ言葉をなるべく多く洗い出すワークなどもやります。会社員経験のある人は新人の頃、上司からほめられるとうれしい気持ちになり、仕事に対するモチベーションが上がったのではないでしょうか。最近は、日本経済が長年停滞している中で、成功体験や達成感を持つ機会が少なく、自己肯定感の低い大人が増えていると言われています。そういう面でも、上司が部下をほめて自己肯定感を上げることは、非常に重要なことだと思います。
最後に付け加えると、子育てでは「放任」「過保護」はもちろん、「過干渉」も良くないと言われます。親が子どもに対してこまごまと口を出すと、子どもはかえって反発し、やる気をなくします。親は細かいことに口出しするのではなく、「見守ること」が大事です。これは職場の上司にも言えることで、細かいことに口出しする過干渉を「マイクロマネジメント」と言い、そういう上司の言動は部下の自主性や創造性を下げてしまいます。
以上のことなどから、子育て経験のある人は、実は部下育成のコツを身に付けていて、会社では管理職としても活躍できるのではないかと思います。
※本文章はママワーク研究所のサイトに掲載したものを転載しています。
