16日 日曜日

梅雨入りしないままの 暑い京都に行ってきました





坂東玉三郎特別公演 です


演目は 『壇浦兜軍記』

阿古屋琴責めの段




切符切りのあと 貰ったプログラム

解説に 3曲の演奏時に唄う歌詞が書いてありました

ありがたい



14時開演

まず 裃を着た玉三郎の

『口上』


5年前にも南座で「阿古屋琴責めの段」を上演したんだけれど 南座さんから まだ観ていない人も沢山いるので また「阿古屋」を演って欲しいとリクエストがあったと


阿古屋は歌右衛門の先輩に教わって 20数年前に国立劇場で初めて演じたと

その時は通し狂言で 阿古屋琴責めの段の前に 

二人景清という段があって 景清役は 團十郎さん

二人景清とは 本者の景清と偽者の景清の2役を團十郎さんが演じた

阿古屋琴責めの段の後に 阿古屋が普段着で、景清のお母さんの家を訪ねるという段がありました と


20数年前の国立劇場の阿古屋を 

歌舞伎データベースで調べると

1997年1月に上演されていますね


玉三郎さんの阿古屋初役の公演


もう27年前のお話し

伊達兵庫で傾城の衣裳で出た後 普段着ですよ 

演りにくいですね とか 歌舞伎らしいですね とか

玉三郎さんは 團十郎さんとの楽屋でのやりとりを まるで昨日の話のように語られました

 

次に 南座との深い所縁を話されました

今までに何回も上演している『娘道成寺』も 『藤娘』も 南座が初演だったと

「21歳の時に、初めて顔見世に出演しました

その頃の南座顔見世は 深夜0時を回っても歌舞伎をしていましたが 23:30以降は 新しい演目に入らないという取り決めがあって 私の役は 『京人形』だったんですけど 初日は 時間が押して 結局『京人形』は演らず仕舞いでした」 と 笑い



あとは 「阿古屋」のお話し

阿古屋は 演ずるにあたって 景清の居場所を知らない 或いは 景清の居場所を知っているがシラを切る という2パターンの演じ方があるが 私は 景清の居場所は知らない ということで演じていると

義太夫狂言で 

花道の出で 「形は派手に気はしおれ」

とか など話されました


約16分の 『口上』 でした



次に 片岡千次郎の 

『阿古屋』の解説


阿古屋琴責めの段は 全五段の人形浄瑠璃『壇浦兜軍記』の三段目にあたる と

竹田奴(水奴)は 人形を1人で遣うツメ人形を表していると

私の役の岩永ですが 人形振りでちょっと文楽人形より大袈裟に演じて 台詞は話さずに 替わりに義太夫が語ると

その他色々解説はありました


玉三郎さんの口上と解説で 

2〜3分予定時間をオーバーしました





25分の 休憩の後





『壇浦兜軍記』 阿古屋


阿古屋は 2018年12月歌舞伎座で 2019年3月南座で いずれも玉三郎さんの阿古屋を観ました 今回が3回目


定式幕が開くと 

遠山の金さんでよく見た お白洲のセット 

上手に三梃三枚の竹本が並ぶ

まず 襖が開き 

中村吉之丞の秩父庄司重忠登場 

しっかりと落ち着いた雰囲気


次に人形振りの片岡千次郎の岩永左衛門 

千次郎さんの〝人形振り〟出てきた瞬間に思いました

上手い!


その後 花道から 前後に3人ずつの捕手に監視されながら阿古屋の登場

ポスター通りの衣裳ですが

打掛けの金色の横縞が ポスターよりもっとキラキラしている


3挺3枚の竹本さんは 上の段に太夫さん

1番右が全体のナレーション役と秩父庄司役

中央が阿古屋役 

左が岩永左衛門役 の 掛け合いでした

すみません 竹本の太夫さんと三味線さんの名前は分かりません


岩永の命令で出てきた10人の竹田奴が勢揃いした時に 阿古屋は 驚いて?打掛けを自然と落とす

その後に続く 琴 三味線 鼓弓の演奏の時 あの立派な重い打掛けを着たままでは大変ですから 


琴責め

琴を弾きながら 蕗組の替え歌を唄うのです

竹本の太棹三味線が伴奏します

唄が終わると 玉三郎さんの琴と太棹三味線とのテクニックを駆使した素晴らしい合奏が聞けます 

琴と三味線がキャッチボールするような連れ弾きもあって 阿古屋と景清が美しく合奏しているような そんな気分になりました

阿古屋と景清の逢瀬の時は 廓で こんな感じに琴や三味線を弾いていたんだろうな そんな想像をして聞いていました


三味線

竹本さんが並んだ雛壇の上の御簾が上がって

長唄&三味線さんが見えます

長唄は杵屋勝四郎さんです


阿古屋が持つ三味線は 太棹ではないのは分かりますが細棹か中棹かはよく分かりません

恐らく細棹なんだろうと思いますが 長唄三味線さんの細棹と音色がちょっと違う そこに太棹三味線も加わって 三重のハーモニーが生まれる 美しい

歌は かかりだけ玉三郎さんが唄いましたが 後は勝四郎さんが唄いました


文楽の阿古屋は 三味線を演奏する前に俎板帯をはずしますが 玉三郎さんは取らないですね 

見た目は映えますが 出っ張った帯が恐らく随分邪魔なはずです


阿古屋は 舞台の少し下手にいますが 三味線を引く時は 体を斜め上手に向いて演奏をしました

私は上手の3列目20番に座っていましたが ちょうど私の方を 向いて演奏をしてくれました ウレシイ


今考えると 三味線を合奏するときに 玉三郎さんが左手で棹を軽くトントントントンと叩いて演奏の出だしのタイミングをとるのですが ソレを他の三味線さんたちに見やすく聞きやすくするためだったのかも知れません



鼓弓


(ごめんください 文化デジタルライブラリーより 勝手にコピーさせて頂きました)


胡弓って 三味線と違って 胴の下に 洋傘みたいに 長い角が生えています

〝中子〟というらしいですが 恐らく長さが10センチ以上ある

左右に胡弓を回して 3本の弦を弓で擦って演奏する時に 中子を軸に回転させているのでしょう



で 桜と孔雀の立派な俎板帯をつけたまま どのように胡弓を支えるのかと思ったら

私 発見しました❗️


孔雀の丸い羽は ある程度動くのですが

ちょうど 胡弓の中子が当たる部分の羽を少しずらすと水色の生地が見えます そこに穴が開いているのです

その穴もただ開いているのではなく 一口ドーナツみたいに回りが少し盛り上がっている 生地と孔雀の刺繍を痛めない工夫を施してあるのです

演奏が終わるとその穴は 孔雀の羽で隠れました


三曲とも演奏の終わりに大きな拍手が起こりました


最後は演奏に一糸の狂いもないとのことで 景清の行方は知らないとの秩父庄司の裁き 

阿古屋はまた打掛けを着て 

三者のポーズが決まって



玉三郎さんは

琴 三味線 胡弓の三曲を完璧に演奏する 

それも 傾城阿古屋を演じながら 余裕を持って演奏する 

至高の藝でした

(現代の歌舞伎役者の中で 他に誰がいるでしょうか)


千次郎さんの岩永の人形振りが 素晴らしかった

岩永は黄色の足袋を履いているが 本当は黒い足袋の上に黄色の足袋の足をくっつけてある

だから足は畳から浮いて見える

人形特有の身軽さと 大きな動作 と よく回る首 大袈裟なポーズ

文楽人形は 頭と右手が主遣い 左手は左手遣いがするので 微妙に左手と右手の高さがずれたりするなですが それを上手く表現している

琴の演奏を聞いている時は 岩永は全く動かないのですが 左手は 宙に浮いたまま ズーッと動かない

人形振りでなければ 「手はお膝」なんでしょうけれど 千次郎さん よく研究してよく頑張っています


私が今まで見た岩永は 

松緑さんの操り人形みたいなものと 

坂東亀蔵さんの控えめなものと


でも今回の千次郎さんの岩永は 人形浄瑠璃の本当の人形振りでした

その人形振りで クスクス笑いがでました


阿古屋と秩父庄司だけでは緊張感に支配された 張り詰めたままの舞台になるが 

そこに出しゃばりすぎないけど 大胆でしっかり演じている千次郎の人形振りで自然な笑いを取って 舞台に緩和をもたらしました


イヤー

良い舞台を 見ました


16:17発のお京阪で帰りました