『ヤマトタケル』は 3幕構成

哲学者梅原猛先生が 古事記の現代語訳の仕事をしていて 三代目猿之助から頼まれて書いた戯曲


第2幕

大和国の聖宮

熊襲征伐を終えて都に帰って来て父の帝に会う

征伐の褒美に兄橘姫を貰い(結婚)

熊襲より大きな 蝦夷の土地を与えると

つまり すぐに蝦夷征伐せよ との命令

蝦夷征伐は熊襲征伐より範囲も広くて困難

親子なのに 〝死ね〟ということか!

前妻の子は 日継ぎの皇子にもなれない 

皇后にとっては目障りなだけ

皇后の操り人形になっている帝 


蝦夷へ向かう前に 伊勢の大宮の叔母倭姫のところに 父に対する暗い心境を吐露しに行く

天の叢雲剣と 困った時に開けなさいという錦の袋を手渡される

天叢雲の剣は 肌身離さず大切に持っておく事と言われた

また 今晩一晩は弟橘姫と一緒に過ごしなさいと


倭姫の笑三郎は 味があるしユーモアがあってクスッと笑わせるし 面白いですね

一方 おぼこい弟橘姫の米吉も大活躍


さて ヤマトタケルの従者は 大和国に従わない吉備国のタケヒコ(福之助)1人

あとからヤマトタケルを追いかけて来た弟橘姫 

ヤマトタケルに抱きつく弟橘姫 カワイイ


この3人が 相模の国に入って来た 焼津

ここはもうすでに蝦夷なんです 

騙されて 草むらで火をつけられて 絶体絶命になる3人

倭姫に貰った錦の袋を取り出す 中には火打ち石

天叢雲の剣で草を刈り 火をつけるタケルとタケヒコ

敵がつけた迫り来る火を こちらから勢いの良い火をつけて追い払うことに成功する

天叢雲の剣を 草薙の剣と呼ぶことにしよう と

火は沢山の役者さんが 旗を振ったり とんぼ返りをしたりして表現


次は 海を渡ることになり 大きな船に乗る

すぐに嵐に遭遇する 稲光と大きな波

沈没しそうになるが この嵐を静めるには 弟橘姫を海の神に差し出さなければならないと 深い海の底に行かなければならない

愛するヤマトタケル(夫)を助けるために 海の神の皇后になると 決心する弟橘姫

皇后が座る畳を24枚用意して下さいと プライドを示す弟橘姫

海の上で重ねた畳の上に座るのか?

ゴザを3ヶ所からサラサラと海に落とす

海の上のあちこちにゴザが浮いて漂う

弟橘姫 入水して 下手に流されて見えなくなる

タケルは 船の上から 弟橘姫の行方をあちこち探す 呼べど叫べと 泣けども もう見つからない 



蝦夷の国のヘタルベ(歌之助)が なんか唐突に従者に加わっていた 

それだけヤマトタケルは 慕われる人間だということだろう



幕間20分




宙乗りの用意がされている

私は4列目花道横で見ていました


第3幕


幕が開くと 蝦夷征伐を終えた帰り道

尾張の国の国造(くにづくり)の館

ここで一晩泊めてもらう

国造は名古屋弁を使う 面白い 誰だ? 

錦之助さんではないか⁈

国造の妻は笑也


大和国では皇后が亡くなったと

計算高い国造は ヤマトタケルに 娘のみやず姫を嫁に貰ってくれ と

また帝からの命令は 大和に帰る前に伊吹山の山神を征伐してくれと

みやず姫もプライドが高く やるやらんとか物のように扱われるのは嫌だ また 都に帰ると兄橘姫が待っているヤマトタケルに、私が1番好きだと言って欲しいと

応じるタケル

あと 大和に帰ったらもう戦いはやめて欲しいと

それも承知したと その証として 草薙の剣をここに置いて行くと

年老いた伊吹山の山神くらいは 剣がなくても大丈夫と


舞台が回って伊吹山の鬼たち

山神は猿弥 山神の妻姥神(うばがみ)は門之助


次の日 伊吹山に入って行くタケル一行

タケルは今日はなんだか元気がない

(草薙の剣を持っていないからでしょ)


山神の化身の大きな白い猪が花道を駆けてくる

取り押さえるが 山神たちの棲家に導いてもらおうと 殺さずに放して後を追う 


岩の崖の上から 姥神が術をかけて ヤマトタケルに暴風と大量の雹を降らす 

姥神は命を捨てて3度目の雹を降らせる

ヘトヘトのタケル 

今度は山神と大きな白猪が 代わる代わるタケルと闘う

タケルは 左脚を噛まれて 次に右脚を噛まれて

最後は 崖の上で山神を斬り 山神は知盛のように落ちて死ぬ


タケヒコの肩を借りて山を降りて なんとか能煩野(のぼの)までたどり着くが 脚が三重に折れて動かない

致命傷なのだ

一緒に戦ったタケヒコやヘタルベや家来たちの処遇を心配し

大和の国 幼少期に暮らした平群(へぐり)の里 父帝の事 兄橘姫と5歳の未だ見ぬ我が子・ワカタケルに想いを馳せながら生き絶える


志貴(しき)の里

ヤマトタケルの石積みの大きな墓が舞台中央にある


兄橘姫とワカタケル タケヒコ ヘタルベ


ヤマトタケルは 亡くなっても父帝から冷遇されたまま

ヘタルベは やりきれない

皇后の実子の日継の皇子が亡くなったと知らせが入る

帝は ワカタケルを日継の皇子にする と

「お父様は 帝になられたのですか?」

「いや」

「では 私もなりたくありません」みたいなことを言うが 兄橘姫が諭す


皆んなが引き上げたあと

突然石組みの墓の上部が崩れて 大白鳥となったヤマトタケル團子が登場する




階段エレベーターを下って本舞台に立つ


「大和(倭)は国のまほろば たたなづく青垣山籠れぬ 大和し麗し」

能の地謡のように唄われるところ 優雅にゆっくりと舞いながら花道までくる


さあ ここから宙乗りです

大きく羽根を広げて また天高く上げて さーっと浮かび上がっていく 

拍手が起こる

私はずっと拍手したまま

高く飛んで進んで行く かと思えば

2度ほど私のいる 花道のスッポンの上まで戻ってくる

最後は 3階の仮鳥屋のスモーク中に吸い込まれてききました

神々しい宙乗りでした


これで終演かと 思いきや


本舞台が明るくなり

カーテンコールのように

出演した役者さんたちが 左右から順番に舞台に現れて整列する

米吉は 初めは赤い衣裳の弟橘姫で登場して

最後にワカタケルと一緒に兄橘姫として登場

老大臣の寿猿さんも 衣裳のまま登場

中車帝も登場

残るは團子 

墓の上にセリ上がって登場 衣裳は白鳥から 若武者?の白地に赤の入った衣裳

帝の前まで進み 膝をついて 帝に手を差し出す

帝は嬉しそうにその手を取る

それを見て涙を拭く兄橘姫

よく見ると 兄橘姫とワカタケル タケヒコとヘタルベの頭には 平群の樫の葉の髪飾りが付けてある


あー ここまでが歌舞伎だったんだ


緞帳が下ろされる


父帝に認められようと 分かってもらおうと 頑張ってきたヤマトタケル

最後に親子は手に手をとって 幕となった

私の気持ちは この演出に救われた