文楽劇場 新春文楽公演の第3部

平家女護島の次は

伊達娘恋緋鹿子

だてむすめこいのひがのこ


歌舞伎でも文楽でも 今まで見たことのない演目



で 

松竹座の1階席ロビー(3階)に 絵が飾ってある

歌舞伎では人形振りで演じられるとか

また文楽人形がどのように梯子を登っていくのか?

凄く興味があり見たかった演目です



プログラムによると 

1683年 江戸本郷の八百屋お七が前年の大火で焼き出された際 避難先の寺で知り合った寺小姓との再会を願って放火したために火刑に処された

本作は 1773年大坂で初演されたとのこと


私は江戸の話なので 江戸で作られた人形浄瑠璃だろうと思っていましたが 舞台は江戸ですが 大坂で作られた 

お七の放火事件から90年後に初演されているのです

全8巻の内の6の巻のみの上演とのこと





八百屋内の段

豊竹藤太夫

竹澤宗助


寺小姓の吉三郎は 主が お殿様の大事な宝物の天国(あまくに)の剣を紛失していて 明日の朝までに見つけないと 主と共に切腹しなければいけない 

最後に恋仲のお七に会いたいということで 

夜遅く八百屋にやってくる

出てきた下女お杉が縁の下に隠れるようにいう

お杉は用事に出て行く


青と赤の縞の振袖を着た 良いところの町娘の格好のお七(勘彌)と父親が出てくる

去年の大火で八百屋の店が焼けて 萬屋武兵衛に借金して 店を再興した 借金の返済の肩代わりに 娘お七を武兵衛に嫁にやる 

今夜祝言の盃を交わすことになっている

親は 武兵衛なんかに本当は嫁にやりたくないが

寺小姓の吉三郎が好きでも 吉三郎は 明日になれば命がないから どうしても今晩祝言をあげてくれと

で 萬屋に嫁に行ったら 朝寝坊して かまどの火はいっぱいくべて ご飯をいっぱい食べて 毎晩武兵衛に背を向けてとっとと寝なさい(夜の営みをせずに)

そうしたら愛想を尽かされて 突き返されるであろうと

母親共々指南する父

面白い


この話を縁の下で聞いていた吉三郎は 手紙を書いて諦めて帰って行く

すれ違いにお杉が使いから帰ってきて 吉三郎はいないし 明日の明け六までに天国の剣を吉三郎の元に帰らないと吉三郎は切腹しなければならないし 

そんな剣がどこにあるかもしれないし 

自分は今から奥の座敷で待つ 嫌な男の武兵衛と盃を交わさなければいけないし

お七とお杉が途方に暮れる

と 

唐突に店の戸棚から丁稚の弥作が出てくる

天国の剣のありかを知っていると

武兵衛の腰に差してある剣が天国の剣だと


お杉と弥作が盗み出しましょうと約束する 


床の盆が回る

浅葱幕が降りる


トンテンカン トンテンカン

舞台の大道具を組んでいる音


床では 5梃5枚の準備



火の見櫓の段


浅葱幕が落とされると

舞台中央に火の見櫓 櫓の上には緑の半鐘がある

上手に番屋

下手に閉まった木戸


雪が降る

お七が出てくる 


九つの鐘が鳴り 江戸の町々の木戸は閉められている

(江戸の町は町ごとに治安や放火を守るために夜中は木戸を閉めて不審者が出入り出来ないようにしていたんですね)

お杉達が天国の剣を取り戻しても 木戸が閉まっているから 吉三郎のところまで届けられない

どうしよう どうしよう

お七の髪がばらけて 髪を留めてあった緋色の鹿子の布と長い髪が 揺れる

天国の剣が手に入ったら 江戸の町々の木戸を開かなければならない

そうだ 櫓に登り半鐘を鳴らそう

そうしたら木戸が開く

(お七は火事ではないのに 嘘の半鐘をならすと火炙りの刑になることなんて全然考えていない)

必死のお七 

振袖の両肩を脱いで 上半身は赤い襦袢姿

赤い襦袢には白い梅の花があしらわれている

(おしゃれ)


お七は 

火の見櫓の梯子を掴むが 凍えた手で滑ってしまう 

上手く登れない

解けた髪と緋鹿子を前後に揺らして 

3度目の挑戦でやっと梯子に登り始める 

(仕掛けは 梯子に平行にスリットが入っていて 後ろから人形遣いが両手を持っているようです かしらはどう持って遣っているのか分かりません お七のかしらは横を向いたり下の方を見たりちゃんと動きます)

途中まで登って 滑って1番下まで落ちてしまう

しかし必死でまた登る

(ガンバレお七!)

櫓の上までようやく上がる

下では お杉と弥作と 武兵衛と武兵衛の仲間の太左衛門が天国の剣を取り合いしている


半鐘を鳴らすお七


最後は武兵衛と太左衛門を懲らしめて 天国の剣を取り戻し 

櫓から降りてきたお七が 剣を抱きかかえたところで




私は前から3列目で見ていたので

お七の両手を スリットから黒い手袋をした人形遣いさんが掴んでいるのが見えました 

真夜中だけど舞台全体が明るくて スリットの隙間から 後ろの江戸の町の景色も見えたので ちょっと残念


もう少し舞台が暗いと お七の人形だけが梯子を登って行くように見えたのではないかなぁ


そうか もっと後ろの席で見た方が良いのかもしれない




ところで 八百屋お七

七は 標準語では 「しち」ですよね


数字の7 は 小学校の時

「なな」か「しち」と読むように習った


でも 7 って 私は物心ついた時から

「ひち」と読んでいた

土曜日の夜のひち時から 漫画「巨人の星」が始まる


中村七之助は 「ひちのすけ」であり

八百屋お七は 「おひち」 と発音している


で 太夫さんは お七をなんと語っているのか?

答えは やっぱり 「おひち」でした


7時のニュースは 「ひちじのニュース」

で よかったんや


江戸っ子が 火箸のことを 「しばし」と発音するのと同じで 

七は 本当は 「ひち」で 

「しち」は 江戸の方言ではないのか?


質屋は 「しちや」だけど 

自分は「ひちや」と発音してるよ


なんか よく分からんようになってきたけど

藤太夫さんは お七は 「おひち」と何度も発音していました

だから 大坂では

お七は おひち で いいんだ

質屋は ひちや で いいんだ



自分は なんでこんなに ひつこいんや!

B型やから か?