【本の紹介】黒沢レオ『黒沢レオ発!行政書士プラクティス - 受験知識は実務でこう使う』 | なか2656のブログ

なか2656のブログ

ある会社の社員が、法律などをできるだけわかりやすく書いたブログです

アメーバブログをみていたところ、4月21日頃に、LEC行政書士講座の講師で行政書士黒沢レオ先生の初の著書が刊行されるという記事に行き当たりました。

・発売開始!!|黒沢レオBlog

かつて行政書士試験の勉強においては、黒沢先生に大変お世話になった人間としては、これは興味深いと、本日、新宿の紀伊国屋書店3階の法律書コーナーにいったところ、行政書士試験のコーナーに入荷し、一番目につくところに大量に置いてありました。


そこで、さっそく購入しました。


自宅に帰ってざっと読み終わったのですが、本のサブタイトルの「受験知識は実務でこう使う」のとおり、行政書士が業務として取り組むさまざまな具体的な事例を、主に行政法や民法などの観点から平明な語り口調で解説している本です。

ネットの資格試験に関する掲示板などの書き込みをみていると、「行政書士くらい受験勉強で勉強したことと実務が乖離している資格試験はない」と書かれていることがあったりして、受験生としてがっかりしたことがあります。

あるいは、近年、法律系の資格試験の難易度が全般的に上昇しているあおりを受けて、行政書士試験も、昔のように半年勉強すれば受かる程度の試験ではなくなってきています。

そのため、さまざまな科目の法制度のかなり細かいところまでしっかり押さえなくてはならなくなってきています。

私が勉強したのは行政不服審査法の平成27年改正前ですが、たとえば異議申立と審査請求との関係について、審査請求前置主義が原則とされつつも、異議申立主義は別途存在する等などといって手続き的な細かいところが延々と続く部分の勉強は、正直うんざりした記憶があります。

しかし、この黒沢先生の本は、そのような受験勉強が決して無駄ではなく、合格して行政書士として働く際には大いに役に立つことを教えてくれます。そういった意味で、受験勉強のモチベーションが大いに上がる本です。

(ただ、ある程度の法的知識は前提として書かれているので、これから勉強を始めようという方は、わからないところは気にせず、ざっと読む感じがよいかもしれません。

行政書士の科目を1周、ある程度、ひととおり勉強した方が、受験勉強の合間に、モチベーションをあげるために読むのに最適な本であると思いました。)

たとえば、スナックを営業している店主から、警察から風俗営業法違反で営業停止の処分を課せられることとなってしまった、何とかならないか、という相談の事例がでてきます(22頁以下)。

この事案の解説部分では、行政手続法に基づく聴聞手続きの全体の流れがリアリティを持って説明されています。

そしてつぎの節では、この事件が聴聞手続きでは解決できなかったので、今度は弁護士に依頼して、行政事件訴訟法に基づく取消訴訟や、差止め訴訟、そして近年ホットなテーマである、「仮の差止めの申立て」を行う話などが具体的に説明されています(26頁以下)。

このあたりは思わず読みふけってしまいました。実務に従事されている先生ならではの、読み応えのある解説だと思いました。

また、2012年に外国人登録制度が廃止されたことに伴うさまざまな変更点が解説されています。とくにこの法改正に警察などの行政自身が実は慣れていないという、黒沢先生の体験談は、とても興味深いものがありました。

さらに、行政庁の行政指導に関して、「真摯かつ明確」の基準をだした品川マンション事件判決(最高裁昭和60年7月16日判決)に似た問い合わせを黒沢先生が受けた事例の紹介もなされています。

また、同様に、国籍法違憲判決(最高裁平成20年6月4日判決)や、2014年に日本でも発効した「子どもの連れ去りに関するハーグ条約」など、最近の注目すべきトピックスに関連して、黒沢先生が携わった事案が紹介されています。

このような行政書士試験の勉強におけるさまざまな分野の知識が、行政書士の実務で生きてくることがよくわかります。

なお、しばしばネット上の掲示板などで、「行政書士は独立にしか役に立たない。会社員には意味がない。」と言われることがあります。

しかし、企業の法務部門・総務部門などにおいては、社内のさまざまな部署から、外国人関係の問い合わせを受けることは日常的です。また、行政庁からの行政指導などにどう対応すべきかなど、行政法などのある程度の理解も必要です。民間企業なのだから、民法、商法、会社法だけやっていればよいというわけにはいきません。

また、今の時代は、企業において、個人情報保護法への対策は必須です。しかし個人情報保護法をがっちりと試験科目のなかにすえている資格試験は、行政書士試験以外にはあまりないのではないかと思います。

なお、受験勉強においては、直近に出された重大な判例が、どこまで本試験に出題されるか、受験生にとっては悩ましい問題です。

この点に関して、この本では黒沢先生の予備校講師としての見解が示されているのが、元受験生としては興味深いです(13頁)。

◆ ◆ ◆ ◆

なお、私は2010年に黒沢レオ先生などが講師を務めるLECの『行政書士スピードマスター講座』の通信講座や答練を受講し、2011年度の試験で合格しました。

通信講座を聞いていて、よくわからない点や、どの問題集を使うべきかなど勉強方法の悩みなどを、当時、LECの横浜校で講師をされていた黒沢先生の講義の空き時間などに質問させていただいていました。私が通信講座の受講生であるにすぎないのに、黒沢先生が快く応じていただけたのが印象的でした。

このように受講生に対して大変面倒見がよく、ときには冗談をはさみつつテンポの良い講義を展開なさる、熱血漢の黒沢先生は、もちろん行政書士の本業もさることながら、行政書士試験の受験の場面においても、なくてならない先生なのではないかと思います。

私は2010年、2011年に黒沢先生に教育・指導していただいたことを、大変感謝しております。

■この2010年・2011年の合格までの勉強の経緯などについては、こちらをご参照ください。
・【まとめ】行政書士試験の合格のための勉強方法

■LECの行政書士試験講座
行政書士サイトはこちら


・行政書士黒沢レオBlog

・黒沢レオ行政書士事務所ウェブサイト

■追記
また、黒沢先生は、新しく行政書士となった人たちに、実務教育の目的で、数年前からつぎのような講座を開催されているようです。
・実践!黒沢・新田の 行政書士養成塾2015

黒沢レオ発! 行政書士プラクティス




2015年版出る順行政書士 合格基本書 (出る順行政書士シリーズ)





法律・法学 ブログランキングへ
にほんブログ村 政治ブログ 法律・法学・司法へ
にほんブログ村