保険法における重大事由解除 | なか2656のブログ

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従来、保険会社各社の約款に規定のあった、重大事由による解除が、平成22年4月より施行となった保険法に条文が新設となりました(30条、57条、86条)。


立法担当者の先生方が書かれた、商事法務の萩本修編『一問一答保険法』100頁の注を読むと、生命保険における死亡保険の場合は当該保険契約に限らず、モラルリスクが発生した場合は、この重大事由解除ができるとされる一方で、損害保険や傷害疾病定額保険においては、モラルリスクが発生したとしても、当該保険契約とは別の保険契約においてモラルリスクが発生した場合は、保険会社(保険者)は当該保険契約は解除できないようです。


このあたりは、元支払査定担当者としてはかなり悩ましいところです。あるお客様がいて、その方が終身保険契約と単体の医療保険契約に加入していた場合は、それぞれは別に考えるというのは比較的すんなりと理解できます。


しかし、そのお客様が医療関係の特約が付加された終身保険契約に加入しており、その医療関係特約において重大なモラルリスクの事象が判明した場合に、その医療特約だけでなく主契約たる終身保険部分を解除できないのは、正直どうなのだろうと考え込んでしまいます。(いわゆるアカウント型商品の場合は、さらに主契約部分と特約部分との関係は密接不可分であると思われます。)


生命保険会社各社の多くは、このような場合に備えて、特約部分において重大事由解除が発生した場合は、主契約部分も解除となるようにするいわゆるブリッジ条項を設けていることが多いかと思われますが、保険法の重大事由解除の条文が片面的強行規定であることを考えると、そもそもこれらの従来からのブリッジ規定が保険法に抵触するおそれがあるのだろうかと疑問です。


うーん、このあたりはどうなんだろうか・・・。


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