満期配当250万円が約6800円 | なか2656のブログ

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ある会社の社員が、法律などをできるだけわかりやすく書いたブログです

6月7日付の朝日新聞夕刊に、このような
記事がありました。


記事によると、約20年前にある生命保険会社の
養老保険に加入した男性が、「20年後の満期時
に246万円を配当するといわれたが、実際は
7千円弱だった」として、全額支払いを求める
訴訟を近く提起する予定とのことです。
生命保険会社側は、「契約時の配当率をもとに
した予想配当であり、提案書の注意書きにも
変動すると書いた」と説明しているとのこと。


うーん、これは悩ましい。
たしかに一昔、ふた昔前の、生命保険の保険
設計書(いわゆる提案書)をみると、養老保険
や終身保険のイメージ図の右上あたりに、
大きな吹き出しマークが描かれ、そこに
”配当金○○万円”とかなり大きな文字で
表示されているものがあったりしたようです。

また、一昔、ふた昔前の保険の営業マンは、
エクセルやワード等で、見栄えのいい、勢いの
いい募集資料を個別に作ることが良いこと
だと推奨されていた時期もあったような気も
します。


ただ、この記事の保険会社側が主張している
とおり、保険設計書や、「ご契約のしおり-
定款・約款」や、契約締結の際の保険契約の
申込書などの、保険契約の締結の際に交付・
提示される各種の書面には、ごく小さい文字
ながらも、”配当金は変動することがあり
ます”などの注意文言が表示されているのが
通常であろうと思われます。
これまでの裁判所は、世に”口頭弁論主義
ならぬ書面主義”なとと揶揄されてきた
ほどに、訴訟の判断において、書面を重視
してきました。
かの悪名高き、かつての変額保険訴訟において
も、裁判所は、契約締結にあたって、「保険
設計書」や「ご契約のしおりー定款・約款」
などの募集資料が実際に交付されたか否かを
ひとつの大きな判断基準としてきたと思われ
ます。

(たとえば、大高満範『生命保険の法律相談(

改訂版)青林書院』242頁など)
そのため、この新聞記事の男性のお怒りは
ある意味非常にごもっともではありますが、
予想される判決の内容は保険契約者の方にとって
厳しいものになると思われます。


とはいえ、この新聞記事が指摘している
ように、消費者契約法(および金融商品取引
法)が施行されてから約10年経過している
今日において、このような問題がまだ存在する
ことも、大きな問題であると思われます。


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