こんにちは。

 

中高年にとって特に関心がある年金問題

今の国民皆年金制度が発足したのが、昭和36(1961)年のことでした。


様々な課題への対応や国民からの批判にさらされながらも、世界でも稀な年金制度として60数年間にわたって維持されてきたのです。

 

その間には、積立金の不正使用や支給開始年齢の引上げ、消えた年金問題、マクロ経済スライドの導入などなど、予期せぬドラマが展開されてきました。

 

こうした、年金制度の裏側に迫り、厚生労働省の官僚と厚労族を筆頭とする政治家の戦いの歴史を赤裸々に描いたのが、和田泰明「ルポ年金官僚」(東洋経済新報社刊)です。

 

社労士学習のテキストでは学ぶことのできない、年金問題の深層に触れることができる、興味深い一冊です。

 

特に印象に残っている官僚は「年金局数理課」に所属する職員たちです。


彼らは大学で数学を専攻した「超・エリート」たちで、年金の制度設計に当たって、非常に重要な役割を演じているのです。

 

年金局にそうしたセクションがあることは知っていましたが、一体何をしているのか、よく分かりませんでした。


この本を読んで、彼らこそが、5年に一度の財政検証の中心にいて、給付水準の設定や年金抑制の仕組づくりをリードしていることが分かりました。

 

そんな優秀な彼らが苦心したのが、時の政治家たちの思惑です。


国民生活に直結する年金が政争の具とされ、しばしば煮え湯を飲まされ、時に生命を削られてきたのです。

 

まさに命を賭して仕事を貫いた官僚たちの生きざまを読み進めるにつれ、今の年金制度を支えてきた彼らの信念矜持を感じざるを得ません。

 

社労士でなくても、十分な読み応えのある重みのある作品でした。

 

今回もお付き合いいただきありがとうございました。次回の更新でお会いできたら嬉しいです。