こんにちは。
ここまで老齢年金の「繰下げ」受給について見てきましたが、これらは「老齢年金ガイド」(日本年金機構」を見ればほとんど分かることばかりです。
ただ少しだけ見方を変えないと分かりにくい仕組みになっていて、その最たるものが「加給年金」と「振替加算」だと言っていいと思います。
vol.11:加給年金・振替加算と繰下げ
社労士学習をしたことがある人なら「加給年金」や「振替加算」がどんなものか理解しているはずですが、もう一度おらさいしておきます。
⚫︎加給年金
・厚生年金等に20年以上加入した人が65歳になって老齢厚生年金をもらうとき、生計を維持する年下の配偶者や子がいると支給される加算額です。
・配偶者加算額(年間):388,900円(昭和18年4月2日以降生まれで特別加算額含む)
(なお令和5年度からは397,500円に増額)
・あくまで老齢厚生年金受給者に支給されます。配偶者が65歳になるともらえなくなり、その代わりとして配偶者がもらえるのが「振替加算」です。
⚫︎振替加算
・「加給年金」をもらっていた人の配偶者が65歳になって老齢基礎年金をもらう場合に、配偶者の老齢基礎年金に加算されます。
・振替加算額(年間):32,899円(昭和34年4月1日生まれの場合)
・あくまで老齢基礎年金受給者に支給されます。
そして、この2つの加算の性格が「繰下げ」の選択の仕方と深く関わってくることになります。
つまり、
・老齢厚生年金「繰下げ」:「加給年金」なし
・老齢基礎年金「繰下げ」:「振替加算」なし
となるのです。
これは、「加給年金」は老齢厚生年金とセットで、「振替加算」は老齢基礎年金とセットで支給されるという2つの加算の性格によるものです。
大切なポイントなのですが、「老齢年金ガイド」には「2行」だけ簡単に記載されているだけで、これだけ読んでも実際どうなるのか、見えてきません。
このうち、「振替加算」の方は額がそんなに多くないので、「繰下げ」の効果で相殺されそうですが、「加給年金」の方はそうは行きません。
特に、配偶者との「年齢差」があり「加給年金」をもらう期間が長い人にとっては無視できないほどの額となります。
例えば、5歳差(65歳と60歳)なら、
・5年間の加給年金額:
388,900円×5年=1,944,500円にもなります。
これを「繰下げ」の増額で解消するには何年かかるか、計算しないとどちらが有利が分かりません。
もし「加給年金」を確実にもらっておくという選択をする場合には、
・老齢厚生年金:繰下げせず加給年金受給
・老齢基礎年金:繰下げ
という「選択肢」が出てくることになります。
もちろん、両方とも繰下げしないのもありです。
ここまで「繰下げ」を見てきましたが、なかなか奥深い仕組みになっています。
長い年金制度の歴史のなかで、よかれと思って重ねてきた制度改正ですが、これを自分で理解し自分で選択肢を考えろというのは無茶ぶりかもしれません。
年金によく通じた社労士さんの力を借りる方が賢いと手前味噌ですが、そう思います。
今回もお付き合いいただきありがとうございました。次回の更新でお会いできたら嬉しいです。