こんにちは。
前回は、老齢年金の「繰上げ・繰下げ」受給に関して基本となるところを見ました。
今回は引き続き「繰上げ」に絞って注目すべきところを取り上げてみます。
vol.7:繰上げ受給のポイント
「繰上げ」受給を「請求」した場合、請求時点に応じて1月当たり0.4パーセント年金額が減額されます。「前借り」するのですから仕方ありません。
例えば、
・63歳0か月で請求→減額率9.6%(0.4×24月)
・60歳0か月で請求→同24%(0.4×60月)
となります。
最大となる5年(60月)繰上げしたら、もらえる年金額は4分の3になってしまいます。これが生涯続くことにも注意が必要です。
ただ、この0.4パーセントは令和4年4月に0.5パーセントから緩和されたもので、昭和37年4月1日以前生まれの人には0.5パーセントが適用されます。
ここで気を付けたいのが、60歳台前半の「特別支給」の老齢厚生年金を受給できる人が、繰上げ請求するケースです。
この場合には「特別支給」の「受給開始年齢」が来ているかどうかで取扱いが変わってきます。
⚫︎まず「受給開始年齢」がまだ来ていないときには、「繰上げ受給の老齢厚生年金」については、繰上げ時から受給開始年齢時までの月数分が減額されます。
一方「老齢基礎年金」はルールどおりとなり、また、「特別支給」の老齢厚生年金は「繰上げ受給分」とダブることになりますので支給されません。
日本年金機構の「老齢年金ガイド」に掲載の事例を引用すると、こうなります。
・「特別支給」受給開始年齢:62歳
・「繰上げ」受給時:60歳
の場合には、次の①+②となります。
①繰上げ受給の老齢厚生年金:24か月9.6%減額
②繰上げ受給の老齢基礎年金:60か月24%減額
減額率が異なることに注意が必要です。
⚫︎次に「受給開始年齢」が既に来ていてその後に繰上げ請求するときには、次の③+④となります。
③「特別支給」の老齢厚生年金
④繰上げ受給の老齢基礎年金(減額後)
そのほか注意しておきたいのは、「繰上げ」請求によって「65歳到達」とみなされる場合です。
・寡婦年金の受給
・国民年金の任意加入、保険料追納
・障害基礎年金の請求(原則)
は「65歳到達」となりできなくなります。
また、「繰上げ受給の老齢基礎年金」と遺族厚生年金との併給については、65歳にならないとできないこととされています。
「繰上げ」は年金制度上は65歳になったものとして扱われることになりますので、他の年金制度とのいろんな調整が出てくることになります。
個別の事情で詳細な年金額まで分からない場合には、社労士などの専門家に相談した方がよいかと思われます。
「繰上げ」のメリット・デメリットを併せて考え、また自分の健康状況や老後の生活プランなども考慮のうえ、慎重に判断することが大切です。
今回もお付き合いいただきありがとうございました。次回の更新でお会いできたら嬉しいです。