こんにちは。
社労士法にしても、労基法にしても、法令や条例の条文の「語尾」はとても大切です。
その書き方次第で、「義務」なのか「努力義務」なのか、あるいは単なる「訓示」なのかが決まってきます。
⚫︎語尾を分類してみたら
そのため「語尾」の書きぶりには細心の注意を払うようにしたいものです。
大雑把ですがこんな感じでまとめてみました。
①「〜してはならない」→不作為の義務づけ
②「〜することができる」→裁量権の付与
③「〜しなければならない」→行為の義務づけ
④「〜するものとする」→弱い義務づけ・原則
⑤「〜努めなければならない」→努力義務
⑥「〜努めるものとする」→努力義務・原則
このうち③「〜しなければならない」に反する場合には「罰則」が通常付くことになります。
⚫︎判断に迷う語尾の例
さて、これらのどれにも分類しにくいのが「〜しないようにしなければならない」という、例の「語尾」です。
労基法附則136条に出てきます。
年次有給休暇を取得したことによる不利益取扱いに関して定めたものですが、どのレベルまで求めたものか判断しにくいところです。
本当は③にしたかったのかもしれませんが、ややトーンダウンした「語尾」になりました。
旧労働省はこれについて「いわゆる訓示規定であり、罰則の適用はない」としていたようです。
一方よく知られた「沼津交通事件」の最高裁判決では「努力義務」としたとされています。
また今学習している安西愈先生の著書では「努力義務ではゆるくなる」として、「強行規定」との「中間」が妥当、と解説されています。
判例・学説ともはっきりしていないように思えますが、立法当時には余りはっきりさせたくない事情があったんだろうなあと推察します。
苦心の跡が見えてきそうです。
個人的には、年次有給休暇の取得を阻害する要因を排除する意味から、上の分類では「④弱い義務づけ」くらいが適当ではないかと思っています。
もちろんスッキリした「語尾」が望ましいのですが、「語尾」でニュアンスを出すという、いかにも「日本らしい」やり方も嫌いではありません。
今回もここまでお付き合いいただき、ありがとうございました。次回もまたアクセスしてください。
もう一つの旅の楽しみ vol.21
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