「生産35兆円海外に流出 製造業、アジアなどにシフト」(5面)



日本企業がグローバル化の流れにのって脱ニッポンをはかっている。その背景には縮みゆく内需や高すぎる税制などがあり、さらに円高ということもあってますます日本企業の海外シフトが急がれている。では実際、海外シフトが進むと日本にどのような影響があるか。

製造業の海外生産の影響を試算したデータでは、現地法人が生産した製品などが日本からの輸出に置き換わる「輸出代替効果」と現地で生産された品が日本に輸入される「逆輸入効果」では国内の生産や雇用にマイナスをもたらしている。国内から現地法人に原材料などが輸出される「輸出誘発効果」はプラス要因になっているが、差し引いても約35兆円の生産が国内で減っている結果になった。これは単純計算で国内の雇用も96万人下押しされたことになる。私の地元でも製造業で働く友達がいるが、最近は仕事が少なく、休みが多いといった愚痴などをよく聞く。まさに日本の仕事が海外に取られているようである。

その一方で外資の日本進出は低調であり、08年度の外資系企業の設備投資額は35%も減った。日本は欧州やアジアに比べて法人税が高いことも外資などの動きを鈍らせている。さらに温暖化ガス25%削減という目標も企業に警戒感が生まれている。


いま、世界で経済が低迷しているなか、中国やインドといった新興国は成長を続けており、今後も日本企業が海外に進出する流れは加速するであろう。内閣府の調査では製造業の55.7%が海外生産を「拡大・強化する」としている。国内の生産や雇用の影響がとても心配である。