この家で、最後の夜です。




ちょっと仕事のゴタゴタがあって日記が書けずにいました。
まだそちらの問題は片付きそうにないけど…それはまた別のハナシ。


リフォームがすんだと言うコトで、また部屋を見に行きました。
仲介業者さんの店の前に車を止め、彼がカギを取りに行った。
外は小雨。
走って戻ってきた彼。

「もらってきたよ」

彼の手には、ふたつのカギ。
ひとつのキーホルダーについていたそれをふたつにわけて、
「はい」
と私に差し出した。

今の家のカギより分厚くて少し重い。

彼と二人で暮らす部屋に続くドアをあけるカギ。
言葉なく喜びに満ちる私のこころ。


まだ電気が来ていなかったので、ペンライトを持って部屋に入った。
私がトリ目なのを知って、暗闇を歩くときのために持っててくれたペンライト。

ずっとずっと、彼は私のことを考えてくれていた。
この先も同じように考えていってくれるんだろうなと思う。

この前見たときよりもすごくキレイになっている部屋を見てふたりで驚いた。
「こんなとこに、住めるんだ…」
ここで、暮らすんだ。
ふたりで。
どんな部屋になっていくんだろう。
どんなふたりになっていくんだろう。
…それは誰にもわからないね。

部屋を出て照明器具を買いに行く途中、私は彼にお願いをした。

「どんなときでも、挨拶を忘れないようにしていこうね。
『おはよう』『おやすみ』
『いただきます』『ごちそうさま』
『ありがとう』『ごめんなさい』
…ちゃんと気持ちを伝えていこうね。
もし、私が出来ていなかったとしたらちゃんと注意して…叱ってくださいね」

彼の顔を見た。
「うん」
何度も顔を縦に振り、握っていた手をもっと握ってそう言ってくれた。

自分だけに甘い人生はもう送らない。
他人にもしっかりと厳しくできるよう、自分にもちゃんと厳しくできるようにならなくちゃ。
伝えてよかったなと思いました。


店員さんに頼んだ照明器具を揃えてもらう時、彼は私に車のキーを差し出しました。
「?」私は(なに?)という顔をして彼を見ると、
「今買ったもの、車につめるように後ろのスペース開けといてくれる?」
と言った。

私は一瞬戸惑った。

元結婚相手に何か頼まれたとき、たいてい「えー?なんで私がやんなくちゃいけないの…」って言ってた。
何でも『してもらう』のが愛情だと思ってたから、なんで私に頼みごとをするのよ、って不機嫌な顔をしてた。
やがて元結婚相手は私に頼みごとをしなくなった。


私は彼からキーを受け取り、「はーい。わかった~」と言って車へ向かいました。
そして「ちゃんと言うとおりのことをしてくれた」と彼が満足して喜んでくれるようにきちんとスペースを開けてみた。

店内に戻って、彼と店員さんと私で車へ向かった。
空けたスペースにちゃんと買ったものがおさまった。
ああ、よかった♪と思った。

彼にそうやって安心して物事を頼まれるような人になりたい。
私が信頼しているように、彼にも信頼してもらえるように私はなりたい。





家へ帰ると、元結婚相手は猫との別れを惜しむような事をひとりで話しかけていた。
私は振り向かなかった。
今日彼に会ってすぐに家と車を何往復かして、いくつかのまとめた荷物を車に積ませてもらった。
それに気づき、さみしくなったのだろう。
前と同じように、猫に話しかけて私を振り向かせようとしていた。
鬱陶しかった。
直接私になぜ言わないのか。
前と変わらず鬱陶しいとしか思わなかった。

しばらくしてあきらめて元結婚相手は寝てしまった。
最後に一緒にお酒を飲もうかなと思って買ってきてたんだけど…
元結婚相手はひとりで勝手に飲んでしまってた。
そんな気持ちもないんだなと思い、私もあきらめた。
別れの寂しさやつらさはもう十分噛み締めた。
そう感じていたし、元結婚相手にそれを強要するつもりもなかった。
ようは、どうでもいいと思ってしまった。

あとは、日記を書いて寝るだけだと考えた。
明日は早く起きて引越し。やらなきゃいけないことが山ほどある。
悲しんでいるヒマはもうない。



明日の夜には、もう私はここで眠らない。
彼にココに送ってもらうのも今日で最後だったのだ。

終わるのだ。

苦しかった時間が。







あきらめずに好きでいてよかったと、心から思う。





願いは叶うんだと、……私の人生にまたこんな喜びを感じるときが来るとは……
なんて幸せなことなんだろう。





今まで苦しんできてよかった。

彼がいて、本当によかった。





それをずっと忘れないで暮らしていきたい。




明日、ここを出ます。









次に日記を書くときは、彼と暮らす家からになると思います。
ネット環境が整ったら、まだ書き足りないこともあるのでまたここへ言葉を残しに来ると思います。






応援してくれたみんな、見守ってきてくれたみんな、
本当にありがとう。





彼を信じてこれからも頑張ります。