「何のために自分は頑張って慶応に入ったのだろう・・・・・・・。」
15年ほど前、慶応大の女子学生がつぶやいた言葉がいまでも耳に残っている。彼女は高校時代すべてを犠牲にして第一志望の大学に合格した。しかし、就職では適切なアプローチがとれなかったために、縁故採用の食品会社・一般職で妥協。
受験支援の会社で働いたことのある私ではあったが、こんな場面に出くわしたときほど受験戦争の虚しさを感じることはない。
就職アドバイスの現場で痛切に思うのは、エントリーシート対策がテクニックに偏りすぎていることである。競争倍率の低い志望先であったり、当人にもともと実力があったりすれば、あとはテクニックで仕上げをして内定、というケースはある。
しかし、競争倍率が高い企業や公務員を志望して、努力によって内定を勝ち取ろうと思えば、テクニック中心の対策はときに致命的な結果をもたらすことが少なくない。
志望先の人事は、エントリーシートを通して、入社2~3年後にはシゴトで活躍してくれそうな人を採用している。逆にいうと、テクニックを駆使してシゴトができそうだと思わせようと、就職活動ならぬ「修飾活動」をするような人を必死で落とそうとしている。
企業や組織側からすれば、皆さんを正社員として採用した場合、生涯賃金は2億円~3億円にもなる。多少は見る目のない人事や面接官は存在するが、まともな会社・組織であれば、こんな高い買い物をするのにみすみすだまされてしまうということはあまりない。
少し考えればしごく当然のことなのに、就活が進むにつれてこのことは、驚くほどきれいに忘れ去られてしまう。
夏の高校野球は例年、電力会社が真剣に電力供給不足を心配しなければならないほどの視聴率を記録する。テクニックであれば、プロ野球のほうが断然すぐれているはず。それでも人は高校野球に魅了される。
何に心を動かされるかといえば、可能不可能などおかまいなく、昨日までの自分の限界を超えようとするトライをやめない球児たちのひたむきな姿勢だと思う。
確かに守備や打撃のテクニックは必要不可欠のものだ。しかし、人の心をつかむのは最終的にはハートであることを、エントリーシート対策の入り口でしっかり胸に刻んでおいてもらいたい。
「本当のことを書こうとしたら自分の半生の中には誇れるものが何もない」と不平を言う人が少なくない。
しかし、そういう人は本当に手を尽くしたのだろうか?
かつての私の教え子の中には、東京在住の女子学生だったが、あるメーカーを受けた際に丸2日つぶして栃木と静岡の工場に見学しに行った就活生がいた。志望動機にその体験を反映させて「工場関係のシゴトがしたい」と熱意をアピール。就活スタート当初は連戦連敗だったが、体を張ったアクションの成果をエントリーシートに盛り込むようになってから連戦連勝に転じた。最終的に彼女は、この企業も含めて印刷会社、ブランド品販売会社など合計難関企業4社に内定して就活を終えている。
1000人を超える就活生と個別に正面から付き合ってきて、成功の方法は人の数だけあるのだと確信するに至った。実際、私の主宰するスクールでは、始めはボロボロに書類が落ちていた人も、2~3か月後にはほとんど全員が通過するようになる。もちろんウソは書かせてはいない。
このブログ「エントリーシート甲子園」では、私自身が個別に接した就活生のドキュメンタリーを紹介している。
ただ、学生のプライバシーへの配慮から一部フィクションを交えている。あらかじめご承知おきいただきたい。
実際の高校野球に話を移そう。2004年、春の甲子園の準々決勝。済美とダルビッシュを擁する東北の試合。2対6のスコアで済美の敗退が決まったかのうように思えた。しかし9回裏、甲子園史上初の「4点差逆転サヨナラ劇」で済美が東北を下している。
野球と同じく、就職活動もまた筋書きのないドラマである。99%負けが見えたとしても、1%でも可能性が残されているのなら、そのチャンスをつかむことに全力を尽くしてみてはどうだろう。
たとえ甲子園に出場できなかったとしても、全国大会をめざすことによって、結果として自分の限界を打ち破ることが可能になる。就職活動も同じだ。本気で夢を実現させようと全身全霊で臨んでこそ、飛躍を遂げることができる。