『わたしにそれを言わせないで』第五部-22 | 香川なほこの官能小説「わたしにそれを言わせないで」

香川なほこの官能小説「わたしにそれを言わせないで」

自分の体験を踏まえ、愛と性の小説を書いています。恥ずかしいけれど。

第五部 秘書の部屋

 

22 (透かし彫り)

「わたしはどきどきして、どうしようかしらと思った。一瞬、その場から逃げだそうかと思ったけれど、ちょっと待てよ、と、踏みとどまって、混乱する頭で一所懸命に考えた。
母が強盗か何かに襲われているのかもしれない。でも、ちがうかもしれない。ああ、どうしよう。
わたしは一計を案じて、べつの部屋から椅子を運んできたの。そうして座敷のふすまの前に置いて、その上に上がった。
座敷は鴨居の上の欄間が透かし彫りになっていて、羽を広げた鳳凰か何かが彫刻されていたの。そこからなかが見えるでしょ?
で、椅子の上に立って、背伸びして、透かし彫りのすき間から、なかをのぞいてみた。そうしたら……。」

(つづく)


●電子書籍は明鏡舎。

http://www.meikyosha.com