自己紹介①はこちらから
小学3年から中学1年までの5年間、心地よい海辺の町で過ごした後、中学2年で球磨に帰ってきた私は、やっぱり目の前にある山に夢中になった。
まるで部活のように山に通う日々だった。
といっても山登りではなく、ママチャリで山のふもとまでの1時間コースから谷渡りの3時間コースまで、毎日自転車を走らせていた。
一足一足、力をこめてペダルを漕いでいく。
ふっと見上げると、そこにはいつも山が待っていてくれた。
春には、一面のレンゲや菜の花。
足元にはオオイヌノフグリが、青空のかけらのように咲きほこっている。
夏には、ひしゃくが添えられている湧水の水飲み場で、喉を潤す。
秋には、色づいた大きな銀杏の木。世界全部が落ち着いた色彩になる秋が一番好き。
冬の冷たい風を頬で感じながら走るのも大好きだった。
山に行くと、たくさんの”生命”に包まれているのを感じて、いつも心がふわっと温かくなり、多感な思春期の私を救ってくれた。
田舎道は人とすれ違うこともほとんどないのをいいことに、ママチャリの前カゴにカセットデッキを積み込み、カセットテープの音楽を聞きながらのサイクリング。
一番のお気に入りは、チューリップの「ブルースカイ」。
今考えると、のんきな時代のへんな中学生だった。
休日に友達を誘ってサイクリングしたこともあった。
へんな中学生によく付き合ってくれたものだ。
友達と行くサイクリングも、それはそれで、なかなか楽しかった。
道の途中に、小高い丘が見える場所。
その丘には二本の杉の木がちょうど門のように立っていた。
少女漫画「キャンディ♡キャンディ」にすっかり感化されていた私は、その丘を「トゥーツリーの丘」と名付け、そこに孤児院を建てることを真剣に夢みていた。
「キャンディ♡キャンディ」に登場する「ポニーの丘」にある孤児院「ポニーの家」そのまんまだ。
もう一つの自然の中での楽しみは、川遊び。
時々友達と遠征もしたが、球磨川の支流の小椎川がホームグラウンド。
球磨川と小椎川が合流する近くに、「わん淵」と言われる淵があって、一番深いところで水深3メートル。凝灰岩の岩から飛び込んだり、淵にもぐったり。
大体の女子は川遊びも中学生までだったが、私は小学生に交じって高3の夏までほぼ毎日、川で泳いでいた。小学生男子の間ではちょっとしたアイドルだった。
その頃の私が好きだったもの。
「大草原の小さな家」
「アルプスの少女」
「星の王子様」
「詩とメルヘン」
「だれも知らない小さな国」
紆余曲折あったが、結局、やっぱり、還暦を迎えて「この世界が好き」に戻ってきた。