物価安定を目の敵とせよ28.9.30
 私も今まで馬齢を重ねて来たが「デフレ脱却」なるプロパガンダは初めて耳にするところだ。
 生まれて此の方「インフレ退治」しか聞いた事は無い。「インフレ退治」なら子供の頃からずっと聞かされてきたし、個人的にも身に沁みて同感する所だ。「インフレ退治」なら大いに賛同する所だ。この世に生を受けて彼是一世紀近く馬齢を重ねて来た歴史の生き証人としての実感である。
 我々一般大衆、勤労者、零細事業者にとって死活問題に直結するのは、物価高(インフレ)、正確には「物価の持続的上昇(インフレ)」だ。
  一般大衆の生活基盤を根底から崩壊させるのは「インフレ(持続的物価上昇)」である。俗に地震・雷・火事・親爺と言われるが、インフレ(持続的物価上昇)の恐さも勝るとも劣らないのではなかろうか。

 倹約、質素、節度、誠実、それらの徳目はインフレ(持続的物価上昇)の前で消し飛ぶ。
堅実な経営、実直な資金運用、誠実な研究開発、根気強い新人教育、相互の人倫を重んじた取引関係。しかし、インフレ(持続的物価上昇)はそれらの美質を侮蔑し嘲弄する。「コツコツ貯蓄する」「地道に働らく」「山っ気を慎む」「辛抱強く研鑽する」と言った日本人が長い伝統と文化の中で育んできた美質が、切り壊される。

  中小零細企業を廃業や閉鎖に追いやり、曲がりなりにも社会保険料を収める正社員であった者を、ある日突然、非正規労働者と化す。インフレ(持続的物価上昇)業火を前にして人は無力だ。仕事を失い幸福な家庭を破壊され、長年の友人知人には別離を告げさせられる。

 何故、安倍兩班政権は、過去15年にも渡って安定して来た日本の物価を、唐突に「持続的上昇」に持ち込もうとしたのだろうか。何故、誰も頼みもしないことを思い付きだけで不意に遣らかしたのだろうか。何故、大衆の安定して平穏な生活と云う細(ササ)やかな幸せを、突如として蹂躙しに掛ったのだろう。
 安倍兩班政権登場前、過去15年間、寧ろ物価は-0.5%~-1.5%の範囲で「持続的に下落」を続けた。牛丼が280円になり、カレーライスも380円になり、ラーメンも400円台になった。軽自動車は100万円以下が普通になった。当時日本国民は強くなった円で海外旅行を「安く」買えた。OLや若手社員も年に4回も5回も海外旅行が楽しめた。日本企業は貪欲なまでに次々に外国企業・メーカーを「安く」買収した。
 国内のメーカーもサービス業も原材料物価が「下落」を続けていたので、仕入れには苦労が無かった。強い円によって仕入れ輸入価格が下落を続け、その分、製品は「自動的」に収益力を高めた。だから製品やサービスの値上げの必要も一切なかった。
 その為、雇用は極めて安定していた。何百万人もの正規社員が非正規雇用に追い遣られることなど考えられなかった。

  処が、ある日唐突に、安倍兩班政権は日本と云う巨大な消費社会に向かって有無を言わせず「持続的物価上昇」を号令した。説明も理由も一切なしだ。ある日突然「物価の安定を許さず」「物価を持続的に上げる」と国家機関全てに向かって命令した。
 何故、安倍兩班政権は安定した経済物価、平穏な消費生活を否定するのだろうか。