銀行の良心が勝利した 28.8.10
 本来、乙(引受)は「禁じ手」とされていた。法律上も未だ違法の筈だ。尤も現政権お得意の「閣議決定」だか「閣議解釈」で、「何でも有り」なのだろうが・・・。

 乙(引受)に於いては、財務省が好きなだけと云うか、必要分と云うか、10兆円でも20兆円でも国庫債券を印刷して日銀に「直接」渡す。
 日銀も購入代金分の10兆円なり20兆円なりの紙幣を印刷して「直接」国に渡す。
 考えてみれば同じ財務官僚同士、これで構わない訳だ。寧ろ阿吽の呼吸に基づくから無駄がない。教科書では「政府に財政に於ける緊張感や節度がなくなる。日銀の通貨増発に歯止めがかからなくなる」とか尤もらしく書いてあるが大嘘である。却って互いの役人としての面子に立っているから間違いが無い。役人は自己の出世や面子が掛ると俄かにピシッとする。

 これにより市場を通すコストと時間が削減されると、苦魯堕先生は閃(スラメ)いたのではなかろうか。
「俺様はなんて頭が良いんだろう!」
 例によって総裁室の肘掛付き椅子に反っくり返って、自己陶酔に暫(シバ)し浸かったことだろう。これで愚図でパープリンの銀行の担当者共の相手をしなくていい。「モー、馬鹿の相手はウンザリ」

 それと日銀による金利コストも削減できる。実は市中銀行から折角、苦魯堕日銀が国債を買い上げて遣って、紙幣を山程も預けて遣っても、日本の市中銀行は運用出来ないのである。マルッキリ融資が出来ない。将(マサ)に宝の持ち腐れ。果ては日銀の当座預金口座に預けっぱなしと云う為体(テイタラク)だ。
 厄介なことに日銀様は口座がご自分の所にある以上は、利息の面倒まで看て遣らねばならないのである。此方が払った購入代金に、払った後もこちらで金利を付けねばならない。考えてみれば、否、考えてみなくても馬鹿々々しいことに違いない。
 マイナス金利の暴挙も、此処にその因の一つを求めることが出来よう。
 豚積みに対して金利を払う阿保らしさに耐え兼ねたのであろう。

「豚積みしてんじゃねぇ。銀行の盆暗共!! 
 貸付先を見付けるのがお前等の本来の仕事だろうが。
 俺様が預けて遣った資金を、再び俺様の口座に預けて、ドーするんじゃい。
 どいつもこいつも、トッポイのばかり揃いやがって」
 苦魯堕大先生は日本の市中銀行の無能さ加減に匙を投げて、呆れ返った。
「何で俺様のシナリオ通りに、民間に貸し付けてマネーサプライ(マネーストック)を増やさないのだ。テメー等、俺様を舐めてるとマイナス金利にして、豚積みから金利を取ってやるぞ。」

 正(マサ)か本当に遣らかすとは思っていなかったのに、この大先生様はホントにマイナス金利にしやがった!!

 しかし結論から先に言うと「豚積み大正解」なのである。
 異次元緩和だか苦魯堕バカズーカだか知らないが、マネタリーベースを狂ったように3倍ペースで増加させる日銀を、市中銀行は冷ややかに無視し続けたが、それは「正しかった」。
 
   銀行が日銀の言う事を「聞かず」に、不毛な「貸付競争」や無理な貸し付けに走らなかったことが、間違っていなかったのである。実は都銀も地銀も不良債権処理が完全に済んでいないことが幸いした。異次元緩和なるものを、「日銀」対「市中銀行」の金融政策に係る「暗闘」として見るならば、私は銀行に軍配を揚げたい。

 市場に過剰通貨が漏れ出していたら、本格的な「通貨価値暴落」と「物価の持続的高騰」が招来されていたことだろう。日本市場は修羅場になる。
 国債は価値が暴落、金利急騰。収拾が付かなくなる。解約が殺到したら金利の支払いさえ儘ならない。政府は夜逃げする他なくなるであろう。だが政府メンバーの神々(コオゴオ)しいまでの恍(トボ)け面を見ると、危機をイメージするだけのオツムさえあるのか、その方が危惧を抱かせる。
 財務省は国庫債券の返済義務が自分達にあるなどとの責任感は薬にしたくも持っていないのだから。返す気などサラサラ無いくせに「国の借金1100兆円」とか言って国費を使って国民を煽って不安がらせている。性質(タチ)が悪いこと夥しい。良心の欠片(カケラ)も無い連中である事が分る。牽強付会とかのレベルではなく、完全に虚言の世界だ。

 日本の銀行は自信を持つべきだ。中央銀行のハチャメチャと、財務省の詐言と出鱈目に対し、市中銀行の節度と自制が勝利したのだ。
 民間銀行が、自制心と、金融としての良心を失わなかったが故に
「マネタリーベースを幾等増やしてもマネーサプライは影響を一切受けないことを立証した」
 のである。