3/5 貯蓄は夢か、幻か
話は貯蓄率に戻るが、平成25年( 2013年) 度の国民経済計算確報で、家計貯蓄率がマイナス1.3%になった訳だが、実所得と可処分所得の減少の経緯を見ていると、では何故、24年以前がプラスであったのか、逆に不思議に思えてくる。
すると、そも貯蓄率とは何ぞや、との話から始まってしまう。
貯蓄率には幾つかの定義が有るらしが、報道が準拠したのは「内閣府の国民経済計算における家計貯蓄率」なるものである。
これは、以下の計算式に基づく。
(家計全体の可処分所得)-(家計全体の最終消費支出)=X
Xに「年金基金準備金の増減」を調整=Y
Y÷(「可処分所得」+「年金基金準備金の増減の合計」)=貯蓄率
高齢者、無職世帯など、勤労所得者以外も含んでいるのが特徴とされる。
年金基金準備金の増減、と云うのが判りにくいが、厚生年金基金が代行部分について確保することを義務づけられている積立金のことを云っているらしい。責任準備金という概念があって「将来の掛金収入として、標準掛金だけでなく特別掛金も含めて考えた場合に、将来の給付のために現時点で保有しておかなければならない積立金のこと」と定義されている。実際の年金資産と比較可能な「理論上の積立金」を表している。
年金世代も含むので積立金まで含めたものか、私にはイマイチ理解不足。
でも如何にもお役人様が作った計算式ではなかろうか。建築基準法にもお役所製のヘンテコリンな式がいっぱい有りましたっけ。「道路幅員の割増し数値の計算式」とか「容積率限度の計算式」とか「用途地域に関する都市計画で定める容積率の緩和の上限の数値の算出方法」とか「天空率の計算式」とか北側斜線制限だの高度地区だの、あの計算式だが、よくぞ考え出したものだと感心する。
国民経済計算確報に基づく「貯蓄率」「家計貯蓄」「家計可処分所得+年金基金年
金準備金変動(受取)」の推移である。
家計可処分所得+年金
貯蓄率 家計貯蓄 基金年金準備金変動(受取)
2013 (平25) -1.30% 2.9兆円 283.8兆円
2012 (平24) +1. 02%。 6.3兆円 286.0兆円
2011 (平23) +2.40% 7.1兆円 285.4兆円
2010 (平22) +2.49% 2.9兆円 285.8兆円
2009 (平21) +2.59% 7.4兆円 286.8兆円
2008 (平20) +1.50% 4.3兆円 290.0兆円
2007 (平19) +0.34% 1.0兆円 291.7兆円
2006 (平18) +1.47% 4.3兆円 289.2兆円
2005 (平17) +0.93% 2.7兆円 290.1兆円
2004 (平16) +1.74% 5.0兆円 287.9兆円
2003 (平15) +2.59% 7.5兆円 290.1兆円
2002 (平14) +2.84% 8.3兆円 290.9兆円
2001 (平13) +3.54% 10.4兆円 301.1兆円
2000 (平12) +6.25% 18.9兆円 302.2兆円
1999 (平11) +8.07% 24.9兆円 308.4兆円
1998 (平10) +8.72% 27.0兆円 309.5兆円
わざとらしくプラスマイナスを付けてみました。アベノミクスに対して厭味っぽくなりましたが。
「貯蓄率」にしても「家計貯蓄」にしても「家計可処分所得+α」にしても減少の一途である。
上記の推移表を見る限り、貯蓄は最早、夢物語となったと思えても不思議では有るまい。この流れじゃ、もう無理だろう、が実感となって涌き上がる。トレンドは変わらないだろう。戻るとは考え辛い、否、むしろマイナスの悪化が加速して進みそうとの不吉な予感に囚われる。
貯蓄は夢か幻か。