11/25 為替介入で円を叩き売れ
 縦(よし)んばヘッジファンドのロスカット狩り(又は逆指値狩り、FXストップ狩り)によるレート操作がどれ程あったとしても、どの道早晩、円は1ドル76円を付けた。
 そもそもヘッジファンドがロスカット狩りを仕掛けられたのも、円高トレンドという不動の前提があったからである。円高は為替市場での円の価値を反映する自然の流れであった。自由市場に於ける為替取引は、ファンドのレート操作がどれ程あろうと、日本政府の売国を地で行く為替介入があろうと、現実の各国の経済力を反映したレートに収斂して行かざるを得ない。何故なら、商取引の局面では、仮に商を無視した聖人を気取ろうが、仮に商を卑しんだ武士を演じようが、現代社会に生きる以上は聖人も武士も経済原則には従わざるを得ぬからである。為替に於ける通貨の価値は現実の経済力を乖離しては存在し得ない。
 しかし日本政府もアメリカ政府様も、現実を直視するのは耐えられない、恰も太陽を直視するのが耐えられないかのように(スンマセン、ラ・ロシュフーコーの真似じゃないです)。
 そこで為替介入と云う世紀の愚挙を敢行するに至るのであるが、意外にもこの後遺症は想像する以上に現実には大きい。政府や財政官僚が大号令で円安誘導、円売ドル買を命じるので、市場に大号令の響きが殷々と谺して残り、後々まで大号令の方向に引き摺られてしまうのである、
 後世は--もし日本が生き残っていたらの話ではあるが--昭和60年代から平成22年代に掛けて、日本政府と中央政府がグルになって、当り前であるかのように、平然と行った為替介入、つまり円売ドル買と云う政治行為・金融政策が理解出来ないのではあるまいか。
 現に共に生きていた私ですら理解出来ないのであるから、多分、後世の日本人、つまり我々の子孫は、かなり頭を悩ますことになるのではないのか。
 自国の通貨を自ら叩き売って他国の通貨を買わせて頂くという、この愚挙というも愚か、自虐以外の何ものでもない盲動を、何故、ご先祖様はなさったのか。
 いや、私もあの世に行ってご先祖様方から詰問されたら、何分、返答に窮するの他ないのである。何故、お前の代で誰も遣かさない様な愚昧愚挙に耽ったのか、と。
 答えとすれば、アメリカ様が御命じになったから、としか答えられまい。我々国民を能足ンの愚民と侮ってか「為替の正常化」だの「円高是正」だの、エヘラエヘラと言葉巧みに言い包(くる) め様とする財政官僚やら政府の神経が理解出来ない。今どき子供でも騙されない大嘘、粉飾、欺瞞だろう。自由市場で自由な取引の結果として、需給の均衡点に至って為替取引が成立しているというのに、それを無理矢理、他国有利に均衡点を動かそうと目論んで且つ実行するのである。
国政を預るヤンゴト無きお殿様方は御乱心遊ばしたのだろうか。