7/17 サラ金は完済を徹底して嫌う
 何となればサラ金は「約定金利に足りないから残りを一括で払え」とは決して言わないから。債務者も重々それは承知しているから。私も債務者にくっついてサラ金に完済しに行ったことが何度もあるが、サラ金の担当者は完済に来たというと血相変えて抗(あらが)う。
「ウチは止めてくれ。返すなら他社をまず先にしてくれ。〇〇や□□のカードローンだって残っているだろう。全部返して、それでも金が余っていたら相談に乗るから」
「アンタに融資するために、どんだけ骨を折ったか分かってんの。自分勝手は駄目だかんね。アンタ中心に地球が回ってンじゃないから」
「あんた約束違うじゃない。延滞しても待って上げたでしょ。恩を仇で返しちゃ駄目だから。ボクを困らせたいの」
「このお金はイザと云う時の為に取っておいてよ。ウチに返すのは後、後、最後。大事なお金だからキープしといて。病気とかあるでしょ」
 担当者は頑強に完済に抵抗する。抗弁にもならぬ、ほとんど意味不明で奇想天外とも云える屁理屈を並べて立てて、完済の意思を挫こうとする。傍で眺めていると涙ぐましい程だ。延滞よりも完済を嫌っているとしか思えないサラ金の対応振りだ。
 債務者はドラ息子で、改造車道楽で作った借金を親が知って代りに完済とか、パチンコ中毒の妻の借金を知って夫が完済とか、夫の付き合いの飲み代の借金を知って妻が親戚から掻き集めて完済とか、或いは完済に店舗に出向いた任意整理中の債務者から電話が来て「受け取って貰えないから、至急来て説得してくれ」とか、私も何十回同行したことか。完済の申込に至るまでには一人一人が悲喜こもごものドラマを展開している。ハッピーエンドにならずともドラマに一区切り付けたい所だが、なかなか問屋が卸さない。
 私が見聞した範囲になるが、現実にサラ金が「約定金利に足りないから残りを一括で払え」との方針を取っていないとしたら、債務者が「約定金利に足りないから残りを一括で払」わねばならないと誤解することも有り得ないように思うが、私が奇怪しいのだろうか