3/21 税制変更で相続税の増収
 先日デベロッパー主催の税制セミナーがあって柄にもなくノコノコ出掛けて参りました。人集めに奔走している営業社員の顔も立てずばなるまいとマフラーを痩せ痩(こけ)た喉首に巻き、老骨に鞭打って家の門を出ました。僅かに春の陽気が兆す中、惚け防止も兼ねた、土曜の日の麗(うらら)かな散策となった次第です。
 会場は〇航ホテルでした。午前の部が終わるとお昼になり、デベロッパーより松花堂ランチが提供されました。実は此れが秘かな目当てでございました。お恥ずかしい話ですが年を取ると喰べることしか楽しみが御座居ません。
 塗の入った大きな蓋を重々しく開けると、目にも綾な料理の品々が目に飛び込んで参りました。名和洋の品々が様々に工夫され華やかながらも品よく並んでございました。さて、どれから箸をつけて良いのやら迷いましたが、こんな他愛のない茶飯事が、生きることに倦んでいる年寄りには新鮮な興奮ごとなので御座居ます。
 牛素材の一品など、味わい深いソースといい、初めて口にする料理でしたが驚きと共に美味しゅう頂きました。グラタンなども当初は何を陳腐なものをと侮って一番最後に箸を付けましたが、口にしてびっくり。具材の斬新豊潤といい中味は全くのオリジナルの創作料理でありました。外皮と内との硬軟の絶妙のアクセントといい、調理に注いだであろう手間暇に思いが至り、自分の浅見に思わず恥じ入った次第です。焼き魚も一見すると地味ですが、吟味された素材といい、皮の焼き具合といい、仕上げの照りといい、完璧な一品でございます。余事ながら私、殊の他、皮を嗜好致します。先付け三点の様なものもございまして、内一つが蚕の繭そっくりのものがございました。ポテトを焼き卵で包(くる)んで模様を付けたものでしょうか、余りに凝っていて理解が追い付きませんが美味しく頂きました。流石はホテルの料理、腕利きの料理人が一つ一つを拵えていて、香の物の隅々に至るまで創意工夫の心配りが行き届いていると申し上げて宜しいかと存じます。品数が多いのもあって最後はくちくなり揚げ物を少し残しましたが年寄りの我が儘と思って何卒ご容赦下さい。
 かくして何ヵ月ぶりでカップラーメンから解放され、マトモな昼食に有り付けたことに感動してホテルを後にしました。表に出ると冬の寒さを残した浜風が、火照った頬を心地よく渡って行きました。
 と、これで終っては何をしにセミナー会場まで出掛けて行ったのか分かりません。
 さて、肝心のセミナーの中味ですが、午後の部で公認会計士による税制変更に付いての講習がありました。
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 講師の話は単純だった。
 税制改正により大増税時代になる。特に相続税の基礎控除の40%もの縮小は相続税課税額の同率での引下げを意味し、相続税課税額対象者を爆発的に拡大することが確定されている。具体的には現在、相続税の申告が必要となるのは死亡者の3%程度だが、納税者はおそらく今の3倍位にはなるのではないか。インフレ金融政策により土地価格が上昇すれば路線価も上がり、課税対象者は更に増加することも予想される。
 この相続税の事実上の大増税に対応するには、被相続人予定者は生前から資産を法定相続人や孫に贈与しておくことだ。その贈与を含む相続対策の相談は相続業務に特化している当会計事務所にされるが宜しかろう。また資産に更地が在る場合は、相続税評価を下げる意味からも本日のセミナーを主催したデベロッパーにアパート建築を相談したら良かろう。なお当事務所はスタッフ総勢36名で、フリーダイヤルは〇〇〇-〇〇〇。
 ソツ無く事務所の宣伝を織り交ぜつつ終始講演を展開したことも、如才無く主催者を持ち上げて次回以降の講師のお座敷を確保したことも、全く問題ない。正当な営業行為・商行為であり、これに興醒めするほど偽善者でも野暮でも無い。
 問題は次だ。