3/6  インフレ金融政策推進支持者
 ③ それからマスコミにご登場遊ばす経済学者・経済評論家・経済コメンテーターを自称なさる先生方だ。先生方も物価の安定局面では出番がさっぱりになる職種に生きる種族でいらっしゃる。
 新聞の経済欄・テレビの解説枠を絢爛と飾る先生方の主張は一見して百家争鳴・喧々諤々・百花繚乱に聞こえるが、全て共通して或る文脈から出発しており且つその文脈に収斂される。それは「現状は駄目 ⇨ だから教祖の唱える宗旨に従え」に尽きる。全てはこの文脈で語られる。
 各々の先生方が教条なりドグマなりを唱えているように見えるが、実は「文脈」があるだけで、教条やドグマの中味は、ただの俗説の寄せ集めであったり個人的な妄想と思い込みの集積であったりする。途に角、我々庶民大衆の思考を、上記の「文脈」に落し込むのが後にも先にも総てなのだ。
 そこで先生方の文脈に従えば、まず現実は「駄目」であらねばならない。批判の対象、否定の対象であってこそ、ご託宣を垂れる先生方の出番となる。従って現状が自国通貨の高い信任と経済力の信用によって物価安定局面、実質経済成長局面にあるとすると、勢い教祖様の出番はなくなってしまう。だから、まずはこの好ましい現状を何が何でも難癖付けて批判して否定して罵倒しなくてはならない。高い経済力、円通貨への強い信任、安定した物価、これのどこが悪いのかと言いたくなるが、途に角、難癖を付けて掻き乱さないことには、誰も先生方の効能書きに振り向いてもくれない。
 「確かに定期預金の金利は0.1%ですけど、円高で輸入品が安く買えて物価が全部持続的下落状態にあって牛丼も280円以下で喰べられるしコンビニビールも88円で飲める現状が、果たして先生の仰る通り誤りとしたら、いったい我々大衆はどうしたらいいんです?」って我々凡夫愚民が問い返したらシメタものだ。最早先生方の術中に墜ちたも同然。半ば宗旨替えは成った。後は教祖様の教えに縋(すが)り付かせる作業があるだけだ。
 処で肝心の効能書きだが、そもそも効能書きは嘘八百で構わないのだ。なぜなら効能書きの有効性も無効性も誰も証明出来ないから。実を言えば先生方は心底では物価など安定しようが上昇しようが、どうでもいいと思っている。要はご自分らの出番が増えて稼ぎ場が生まれれば良いのである。
 振り向かせて縋り付かせるのが目的だから、先生方は発言自体には120%責任を負わない。従って仮に為政者がオツムが貧弱な余り先生方の嘘八百の効能書きを信じたばかりに景気を悪化させたなら「教祖様を信じたからこの程度の悪化で済んでいる」との講釈を垂れればいいし、たまたま景気循環の巡り合わせで消費が活性化したら、その時こそ手柄顔して出来合いの既製品の能書きを再び捲くし立てればいい。
 何千万人・何億人の集合たる経済は、その瞬間に何億件・何十億件の取引が生起する世界であり、経済そのものが次にどう展開するなんて誰も分かりませんもん。