7/21 強制執行前の「催告」
 これで引き払ってくれれば良し。
 引き払うかどうか少しでも曖昧なら、落札人は続いて強制執行に移れば良い。
 1週間程度の抗告期間を過ぎたら、送達証明(相手に送達したという証明書)と引渡命令を添えて、強制執行申立書を記載して申し立てする。これも簡単だ。廊下のソファーに座って書ける。
 正確に云うと不動産引渡命令に基づく強制執行申立だ。
 受付の女性はそのまま受け付けてくれるだろう。
 強制執行申立が受け付けられたら次は何かというと、執行官と一緒に明渡し期日の「催告」に出向くことになる。出向く先は債務者が居座っている先、即ち落札物件の現場だ。
 催告する日は、執行官の都合のいい日、空いている日になる。執行官が執行官室の行同予定表を見ながら決める。「来月まで予定がパンパンに詰まってンだよな」とか仰る。
 「催告」とは、強制執行する日を告げることだ。だから催告日には強制執行は行わない。1ケ月弱後の〇月〇日に強制執行を行うと「告げ」て、それを記載した紙を現場に貼り付けるだけだ。この紙は勝手に剥がせない。債務者が剥がすと処罰される。
 鍵屋(開錠業者)を呼ぶのはこの時だ。債務者が鍵を掛けていれば、執行官同伴で鍵屋に開錠して貰う。オートロックのマンションだと管理人が執行官に言われて開けてくれる。
 強制執行まで行きそうなら、加えて、運送業者にも来てもらって中の荷物の量など見積もって貰ったりする。勿論、自分で見積もっても良い。箪笥5個、冷蔵庫2個、テレビ3台、応接セット一式、残りの残置物が6トン車一杯分、等々。
 実は、ここに不動産競売の特色があるのだが、現に債務者等が居座っている場合、入札予定者なり、入札者なり、落札者が、建物内部に直に入るのは、これが最初になる筈なのである。それまでは落札者を含み、誰も建物内部に直に入ることは予定されていない。
 そもそも不動産競売では占有者が居なくとも、代金納付して所有者になる迄、つまり落札する迄、内覧が出来ないところに決定的な特徴がある。中に誰が居なくとも、建物の外から中を伺うしかない。唯一建物内部が分かるのが、執行官が撮った現況調査報告書の写真があるだけだ。
 換言すれば、債務者や占有屋が現に居座っている場合、執行官同伴でなければ建物内部への立入りはタブーなのである。
 相手は破産状態にある。相手の心理は多かれ少なかれ自暴自棄状態にある。そんな債務者が潜む乱雑な部屋の中に、アナタは決して一人で入ってはいけません。入ったが最後・・・。