1/19 人権派栄えて人権滅ぶ
「値下げ差額分返還訴訟」なども、法を遡及させて適用させようとする発想に基づいている。恐ろしい無法行為だ。法を遡及させた途端、法秩序は信頼を失い根底から揺らぐ。駄々っ子でも、新しいお菓子が色々出て、駄菓子の値段が暴落したから、一昨日払った分の差額を返せとは言わんだろう。
先の日本の裁判官様にしても、この弁護士の大先生様にしても、法を遡及させてでも自分らの利権を確保しようとしていることでは、全く同じだ。
そもそも、同じ1000万円でも、10年前と今とでは、実質価値は全く違う。今はデフレ(物価の持続的な下落)だから、名目上は同じ1000万円でも、10年前の1000万円と、現在の1000万円とでは、価値は全く違う。現状の趨勢で毎年-1.5%(マイナス1.5%)の物価下落が続いている訳だから、-1.5%の9年複利、-1.5%の9乗分、実質価値は増加したことになる。正確な計算に自信が無いので言えないが、2~4割は実質価値が増えている筈だ。
つまり、前提となる貨幣価値一つ取っても、名目上は同じ1000万円でも、インフレ下なら10年後の実質価値は600~800万円になるし、デフレ下なら実質価値は1200~1400万円になる。
実質貨幣価値一つ取っても毎日毎日移り変わっているというのに、名目上の金額の差額で切り取って確定するのは、それだけでも偏頗極まりない。

全ては変転極まりなく、千変万化する。その或る一瞬に、売手と買手が合意して売買が成立したのだ。正に縁(えにし)の世界であり、巡り合いの世界なのである。
私も商売柄痛感するが、不動産売買は瞬間芸に近い。買う買わない、買える買えないは、その瞬間に縁があるかないかで決まる。売主の虫の居所が少し悪かっただけでも流れるし、買手の奥さんの好みが少し揺らいだだけで、次の買手に買い主の権利が移る。
不動産売買が成立するというのは縁起物であり、社会通念上もお目出度いことなのである。このお目出度いことに難癖付けようと言うのであるから、無粋極まりない。売手に何一つ法的にも行政手続的にも手落ちがないのに、差額を返せというのは、およそまともな大人のすることではない。
仮に売手の過失で、そのマンションや分譲地の価値が下がったというのなら話しも分からぬでも無い。例えば、売手の社員がそのマンションで自殺したとか、マンション内で殺人事件をやらかした、などと言うのであれば、例によって日本の裁判所の得意芸の一つの主観判断に拠り、風評で資産価値を下げたとの評価も可能であろう。だが経済全体の流れで不動産価格が下落したのであれば売手に責任が何一つ生ずる訳が無い。
どのタイミングで、幾らで売るか、自己責任で行なわれる以上、誰からも容喙される筋合いは無い。
私にはこの手の人権派だとか、弱者救済派だとか、貧困救済派だとか、消費者救済派とかの大先生方のご主張がとんと分からない。
蓋し、この先生方の存在の正当化の為に、先生方により人権侵害事件だとか、弱者侵害事件だとか、貧困者侵害事件だとか、消費者侵害事件だとかが、製造され続けている。其れだけの話だ。
人権被害者だとか、弱者だとか、貧困者だとか、被害消費者だとかを次々作り出して、自分たちに依存して貰わないと、大先生の方が不安で、アイデンテティクライシスに陥りかねないと言うのが真相だ。人権派栄えて人権滅びねばよいが・・・。