小学校に入るか入る前の頃だと思うが、私は家というものは、世の中から自動的に全員に与えられるものだと、何となく思っていた時期が有る。
私は決して社会主義者ではない。むしろ社会主義からかなり遠いところに位置する人間だ。平等と自由のどちらを取ると言われたら、躊躇なく自由を選ぶタイプの人間である。
ただし、その頃、子供心で、家だけは、皆に与えられるんじゃないかと何とはなしに思っていた一時期がある。
実は当時県営アパートに住んでいた。これが子供心にも影響したのかもしれない。当時、私は人が個人の力で家を建てるなど、到底信じられないし、有り得ないことだと思っていた。
今でも一人一人が個人の責任で家を建てるというのは、余りにも個人にとって大事(おおごと)で負担が大きいどころか、無理な事だと思っている。
但し家が200年以上もつなら話は別だ。一世代30年としても7世代が、住居の恩恵に浴せる。これなら単純に考えて負担も7分の1だ。仮に土地建物合計で4000万としても、一世代571万円だ。これだと現実性がある。3000万なら一世代428万円だ。私でも払えそうだ。
正気になって考えてみれば、或る日突然個人で3000万円の借金を負うというのは、無理だし無謀で正気の沙汰ではない。その分、美味いもの喰って、読みたい本を存分に読んで、好きな事して過ごそうよ。
「住宅にかかる生涯支出の落とし穴」
住宅は買った方が得か、借りた方が得か。今に始まった事では有りませんが、住宅購入の損得勘定は家を手に入れようと思った人が一度は抱える悩みだと思います。
テレビや雑誌などでも経済評論家やファイナンシャルプランナーといった肩書の人達が、住宅購入の是非をめぐって論議しているのをよく目にします。購入葉は「金利の低く、住宅ローン減税のある今が買い時」と主張し、賃貸派は「不動産価格はまだまだ下落するから待った方がいい」などと購入に異を唱えています。
こうした論議がどこか虚しいのは、本質的には住宅を持つか持たないかは人生観の問題で、損得だけで天秤にかけられるものではないからでしょう。その人が家に何を求めて、どのような暮らしをしたいかが決まれば、住宅を所有すべきか、賃貸暮らしをすべきかも自ずと見えてくると思います。
あえて住宅購入がコストの問題としても、ひとつ気になる事があります。それは経済評論家やファイナンシャルプランナーの損得勘定の根拠となる住宅コストの計算方法です。一見すると、彼らは金利の変動によるローン返済額の上昇分まで考慮に入れ、住宅を購入した場合の生涯支出を綿密に試算しているように思えます。しかし、そこには大きな落とし穴があります。それは購入した住宅に一生涯すめるという前提に立っている事です。「古民家再生住宅のすすめ」宇井洋先生著 」