8月に松山城の天守閣内にある展示場で、継手と仕口の現物を見る機会があったが、確かに凝りに凝った細工品であった。その凝りように感心して、私一人で観光客の流れから留まって結構長いこと眺めていた。それでも一方のどの部分と、もう一方のどの部分が接合するのかさえ、頭の中であれこれ組み合わせても読み切れないものもあった。
 工芸品と言い切っても差し支えない作品であった。しかし、芸術品といったら作った大工が照れるだろう。尤も作り始めたのは慶長年間(西暦で1600)らしいが。
 技に生きる大工であれば、凝り始めたら止められないだろう。技が技を磨き、技を生む。腰掛け蟻継ぎとか、腰掛け鎌継ぎとか様々の技法があるが、それを基礎として、更に組合せ工夫を加え、巧妙精緻に作り上げている。
 現存する仕口と継手だけでも、作り方を解明して、伝授する学園なり研究所を作ってはどうだろう。勿論、同時に海外発信するのだ。金物や接着剤を一切使わず、木だけで200年続く住宅を建てられることを証明するのである。世界中の木造建築が日本の伝統構法に倣う日は間近だ。

「仕口とは木材同士を直角など角度を付けて接合する木組みのことで、真っ直ぐ足すように接合するのは継手(つぎて)と言います。
この継手や原則的に木だけで接合し、楔や木栓などで接合部分が抜けたり、ずれたりするのを防いでいます。
古い民家が解体して再利用出来るのも、現在のように釘や接着剤を多用していないからです。
 継手や仕口は昔の大工の腕の見せ所でもあったため、複雑な接合も少なく有りません。軸組の継手や死口を充分に熟知した職人たちの手で解体することが大切です100年以上の歳月を経てもビクともしない精密な死口を解体していく作業は、伝統構法で建てられた民家の堅牢さを再認識する瞬間でもあります。「古民家再生住宅のすすめ 宇井洋先生著」」