オリンピック競技によっては体格の差が有利に働くものもある。

そこで格闘技系では階級別(体重別)競技が生まれるのだが、ほとんどの競技ではおのおのの選手が体型を作り上げて競技に臨む。

日本人が欧米人よりも体格が小さいのは以下の法則によるものである。

フォスターの法則:島嶼部では利用可能な生息域や資源量が著しく制限されるため、大きな生物(ヒトやウマ)は小さくなり、小さな生物(ムシ)は大きくなる。

ベルクマンの規則:恒温動物では、寒冷地に住むものほど体重が重く・大型になる。体重当たりの表面積が減少し、放熱量が減少する。シロクマとツキノワグマ。

同じ種で体が大きかったり小さかったりするのは細胞分裂の回数が異なるから。

遺伝子は細胞分裂の回数を増やしたり減らしたり試行錯誤して、今の体型をつくりあげてきたのです。

さて今日は細胞分裂の回数の限界について。

 

赤ちゃんがおなかの中にいる間、生殖細胞は死ぬことがありません。十月十日の間休むことなく細胞分裂を繰り返し、40回分裂すると1㎏になり(前項参照)、41、42回の分裂で3兆個、約3㎏の赤ちゃんを誕生させます。

 しかし生まれたあとも細胞が倍々に増え続けたら、10回分裂するごとに重さは千倍になるのですから、50回分裂で1トン、60回で1キロトン、70回で1メガトンです。身体が高層ビルのように巨大化してしまいます。

そこでオギャーと生まれ途端に、細胞は一定回数以上分裂しないように、命の導火線がついています。それが先に述べた「遺伝子」なのです。

さて遺伝情報は細胞の中のどこに収められているのでしょう。細胞の中には「核」が、核の中には46本の「染色体」があります。染色体がニットのセーターだとすると、それを編んでいる毛糸は「遺伝子DNA」です。そしてDNAは2本のより糸でできています。

 より糸は解(ほど)けて、ちぎれたり絡まったりします。皆さんが普段履いているパジャマやジャージのズボンのひもは、 洗濯をするたびに解(ルビほど)けてふさ状になります。そこで解け防止のためにどんな処理がしてありますか。

そうです端の部分が結んであるのです。

DNAも2本のより糸でできています。もしDNAが解けてちぎれて絡まったりすれば遺伝情報が変化してしまいます。そこで同じようにDNAの端も結んであります。

端のことをギリシャ語で「テロ」、部分のことを「メア」といいます。そこでこの結び目を「テロメア」と名付けました。2009年のノーベル医学生理学賞ですね。

 細胞が分裂するとき遺伝子DNAを正確にコピーするのが複製酵素「ポリメラーゼ」です。赤ちゃんがおなかの中にいるときはテロメアも複製酵素「テロメラーゼ」によってコピーされます。ところが、出生と同時にテロメラーゼが失活(ルビしっかつ)、すなわち働かなくなってしまうのです。

 皆さんの会社のコピー機も、コピーを繰り返すうちにトナー(インク)が消耗していって、最終的にはコピーができなくなってしまいます。

 同じように細胞も、細胞分裂を繰り返すたびにテロメアが導火線のように消耗して短くなっていきます。そして一定回数細胞分裂をすると、その細胞は「自然死」を迎えるのです。それをアポトーシスといいます。

 

今日はここまで