乳癌は周りの組織に浸潤(しみこむように発育)、乳管内伸展(乳管の中を広がる)、
リンパ節転移を起こします。
そこで乳頭・乳輪や癌の直上の皮膚と乳腺や脇の下のリンパ節を全て取り除く
全摘術が行われてきました。
しかし、大きく取っても小さく取っても生存率(寿命)が変わらないことが
大がかりな臨床試験で証明されたために、
我が国では1980年代の後半になって乳房温存術が行われるようになりました。
しかし温存術は放射線をかけても再発率は15%と全摘術の2%に比べるとかなり高い。
それが許されているのは、美容的に仕上がりが美しいからです。
逆に言うと、仕上がりが汚かったら温存は許されません。
そこで温存が難しいが、形態の温存を希望する方のために、1990年代の後半から
新しい手術が行われるようになりました。それが皮下乳腺全摘術です。
この手術は乳頭・乳輪や皮膚を残して乳輪の小さな傷から乳腺だけを全摘する方法です。
傷が目立たずに、乳房の再建も容易です。
さてこの手術のときに使われる医学用語にdemarkationt(デマーケーション)という言葉があります。
この言葉の意味と語源はまた次回。