一夫一婦制という言葉があるが、これは種の保存の法則から言うときわめて不合理である。あらゆる生物は自らの種を守るために生殖をする。魚や昆虫のように一度に何千何万という卵が生めれば、あとは環境に適応できるものだけが生き残ってさらに子孫を増やす。しかし哺乳類の場合は一度に生める子の数がきわめて少ない。大型の哺乳類では一度に1頭、しかも盛りがつくのは年に1回だけである。当然、雌は強い雄を選ぶようになる。しかし、雄は相手を選ぶ必要はない。強い雄はなわばりやハーレムを持っていて一時期に何匹もの雌と交尾できるからである。動物の社会は一頭のボスとたくさんの雌、その子供達で構成されている。子供達がやがて成長すると、雌は群れにとどまることができるが、雄はボスとぶつかるようになる。ボスは最初のうちは軽くあしらっていても、最後は本気で戦って、負けた方は群れから追い出される。獅子は我が子を千尋の谷に落としてはい上がってきたものだけを育てる(後継者にする)といわれるが、多分子供を谷に落としたのは父親で、落とされたのは雄の子供であろう。父獅子は決して雌の子供を谷に落とさないし、母親は決して子供を谷に落とさない。我が家を見ていてそう思った。