なぐちゃんの母はのりちゃんという。父は吉和、母はのり、それでなぐちゃんは吉則である。
母は父のマネージャーだった。父というスーパースターを支え続けた。父が62歳で心筋梗塞に倒れ
引退を余儀なくされたときに、母は習字を始めた。諸芸に通じていた父に比べ、凡人と思われていた母は
始めたばかりの書道でいきなり入選し、みんなを驚かせた。とくに父を驚かせた。その母が私といとこの克人にだけ自分の書を送った。これが母からのメッセージ、夢である。母の認知症は進む。