乳がんの手術を受けました。手術後の結果説明でグレードが3だったといわれました。これはすごく悪いことなのでしょうか、すぐにでも抗がん剤が必要でしょうか。

予後という言葉があります、病気のこれからの経過です。乳がんにもこれからの経過を左右するいくつかの条件があり、これを予後因子と言います。予後因子には7つありますが年齢以外は全て手術で取った組織を病理の先生が顕微鏡で見て判定します。
1.年齢:がんはもともと高齢者に多いので35歳以下の若い人にできた場合はたちが悪いことが多い。また若い人はこれからの人生が長いので、老人よりも遠隔転移を起こす可能性が高くなる
2.リンパ節転移:リンパ節は乳房と全身との国境に作られた関所です。そこにがんがあったと言うことは、すでにがんが全身に回った確率が高くなります。
3.がんの大きさ:手術前に病期を決めますがそれは手で触って決めたのでいい加減。これは病理医が顕微鏡で測った正確な大きさです。もちろん大きい方がたちが悪い。
4.リンパ管・脈管侵襲:がんは動脈から栄養をもらって、古くなった血液はリンパ管や静脈に流れる。このときがん細胞をお土産に持たせてしまうことがある。リンパ管・脈管侵襲とはがんの周囲のリンパ管や静脈内にがん細胞があったということなので、リンパ管を通ってがん細胞が全身に回るリンパ行性転移や、静脈を通る血行性転移の可能性が高い。
5.グレード:?から?まであって、数字が大きくなるほどがんの顔つきが悪い。乳がんは乳腺細胞からできるが、顔つきが正常細胞に似てれば転移しにくいし、顔つきが悪くなるほど転移しやすい。
6.HER-2:ハーツーと読みます。癌遺伝子のこと。この遺伝子があると転移しやすい。0から+3まであって、+3だけが陽性。+2のときは灰色なのでFISH法(フィッシュ法)という再検査をします。
7.ホルモン受容体:ER(イーアール:エストロゲン受容体)とPgR(ピージーアール、プロゲステロン受容体)がある。これも0から+3まであってどちらか少しでも+なら陽性。乳がんは乳腺同様女性ホルモンを栄養にして発育する。中には女性ホルモンが無くても発育するたちの悪いのがある。つまり陰性はたちが悪い。陽性はホルモン療法もよく効く。
学校の試験でも一つぐらい悪いものがあってもおたおたしない。通信簿もらってその総合判定で進級かどうかきめるでしょう。乳がんも7つ全ても結果が出てから治療方針をきめます。