さっき、康裕くんのお父さんからメールがはいりました…。 無事、意識を取り戻したそうです。良かった…。
でもやっばり家族には、本当のことを伝えていないみたい…。 千葉大学の誰があの男に力を貸していたのだろうか…。あんなに巧妙に康裕くんを追いつめるのは絶対内部に協力者無しには不可能よ…。 こんなことなら、後期研修先を千葉大付属病院にして内部から脅迫に手を貸していた奴を突き止める道を選ぶべきだった…。ごめんね…。私にもプライドがあったの…。でも、ここまであなたへの追い込みが辛辣だったなんて想像もしなかったの…。
康裕くんは強いひとだってわかったわ…。だって、あんな自殺を図ったのに生死の狭間から戻ってきてくれたんだから…。
でも絶対許せない! 私だけならまだしも、康裕くんの知人へ危害を加えてやるという卑怯な脅し、心臓の悪いお父さんの千葉大学医学部での治療を妨害してやるという余りにもえげつない脅迫…
しかもよりによってお金をゆするだけでなく犯罪者へと転落させてやるという悪意…。
もしこんなことをしておいて、何くわぬ顔して臨床で働く奴がいるなら私はゆるさない!
「ありがとう…。ヒロちゃんがいなかったらとっくに命を絶っていた…。ヒロちゃんが俺のあこがれであり、目標でした…。全てを失ったけど、ヒロちゃんに危害が加わわらなくて良かった…。代償は大きかったけれど、もうあいつは千葉医には関わらないだろうから…。これで良かったんだ…。
神経内科医として貢献したかった…。
でもそれももう無理だから、せめて自ら命を絶ち、俺の臓器で、移植以外に助かる道のない人達を救いたい…。それが俺に出来る最後の社会貢献…。ヒロちゃんなら絶対凄い神経内科医になれるよ…。応援しているからね。今までありがとう…。」
彼からの最後のメールが届き、彼は…。 バカ…。今から会いに行くけど、死んだら許さないから!
彼への脅しが本格的になったのは学生実習の時だった。千葉大学では学部連携教育・IPEが行われている。彼はその実習で千葉県の某所の薬局へ行った。最寄り駅ので、ロッカーに荷物をまとめ、実習先へ向おうとした矢先、彼の携帯へメールが届く…。
「先に薬局で待っているよ…。」
彼はその時、その男が本気で自分をつぶす気であることを痛感した…。
実際にその男は薬局の前にいたのだ…。 「何故今日実習があるということを知られいる?」
そして
「何故場所まで知られている?」
彼はその時、逆らえば自分以外の人へも脅しが波及する危険性を痛感した。そして彼は苦悩しながら も、言いなり自分を破滅させることを覚悟の上で犯罪者の道へ歩むことになる。 彼は千葉大学の誰かが実習先の情報を流した可能性を考え、下手に大学の先生へ相談出来ず、一人で苦しみを背負うことになる。脅迫はやがてより彼を追いつめる形でエスカレートしてゆく…。