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二重に相続人の資格を有する者の相続放棄と所有権移転登記

1. 二重に相続人の資格を有する者の相続放棄

 
 以前の登記先例では、相続人の資格を二重に有する者が相続の放棄をした場合は、いずれの資格においても相続の放棄をしたものとして取り扱うことを示していましたが、異なる取り扱いもなされるようになりました(平成27年9月2日付民二363号)。
 
 相続人の資格を二重に有する者から相続による所有権の移転の登記が申請され、相続を証する情報として、『戸(除)籍の謄本』及び『相続放棄申述受理証明書』のほか、一方の資格で相続の放棄をしたことを確認することができる『相続放棄申述書の謄本』及びもう一方の資格では相続の放棄をしていない旨を記載した『印鑑証明書付きの上申書』が提出された場合は、相続の放棄の効果は、相続放棄をしていないもう一方の資格には及ばないものとして取り扱われます。
 
 

2. 二重に相続人の資格を有する場合とは

 

 二重に相続人の資格を有する場合とはどのような場合でしょうか。

 

 例えば、BはAの配偶者であり、BはAの父母と養子縁組をしており、Aが死亡した時点においてAの父母(直系尊属)は亡くなっており、Aに子及び兄弟姉妹がいない場合です。このような場合、Bは被相続人の配偶者及び妹として相続人の資格を有します。
 
 
 

3. 相続による所有権移転登記を申請する場合

 

 相続による所有権移転登記を申請する場合において、共同相続人中に相続の放棄をした者があるときは、その者が相続の放棄を裁判所に申述したことを証する書面を提供しなければなりません。当該書面として、通常は、相続放棄申述受理証明書を提供します。

 しかし、相続放棄申述受理証明書には、『被相続人との続柄』の記載がありません。そのため、当該証明書だけでは、相続人がどの相続人の資格で相続の放棄をしたのかは明らかとなりません。

 

 原則として、登記官は、申請人から提供された申請情報とその添付書面からその申請の適否を判断します。
 添付書面等から相続人がどの相続人の資格で相続の放棄をしたのか明らかでない場合は、通常、相続放棄は、被相続人の債務から解放される目的でされることが多いと考えられるので、いずれの資格でも相続放棄をしたものとして取り扱うのが合理的です。
 以前の登記先例は、このような考えに基づいていたものと考えられます。
 
 
 

4. 相続放棄申述の手続き

 

 一方、相続放棄申述書は、昭和37年の家事審判規則の一部改正により、『被相続人との続柄』が記載事項として追加され、現行の家事事件手続規則にも引き継がれております。この改正は、申述人がどの相続資格で申述するのか、その意思を明確にしました。

 

 申請人Bの相続放棄申述受理証明書のほか、申請人Bが配偶者として相続の放棄をしたことを確認できる相続放棄申述書の謄本及び妹としては相続の放棄をしていない旨を記載した印鑑証明書付きの上申書を提供することで、登記官はどの資格で相続の放棄をしたのかを判断することができると考えられます。このような事情で、申請人Bは配偶者として相続放棄、妹として所有権移転の申請を受理して差し支えないとされました。

 

 ただし、以前の登記先例が変更されたわけではありませんので、どの相続人の資格で相続の放棄をしたのか登記官において明らかでない場合は、そのいずれの資格においても相続の放棄をしたものとして取り扱われると考えられます。
  

※ なお、登記実務では、上記の例えで、被相続人Aに他に兄弟姉妹がいる場合は、Bは配偶者としての相続分のみを取得し、兄弟姉妹としての相続分は取得できません(昭和23年8月9日民甲2371号)。

 
 
 

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