ウィリアム・モリス in 府中
今月(11月)2日、東京出張だった私は、その日八王子に泊まり、翌3日(日)、府中市美術館へ「ウィリアム・モリス 美しい暮らし」展を観にいきました。この展覧会は9月14日から開かれています。
パンフレットはA3の見開きで4ページある立派なものです。数が足りないとかでなかなかオープンにはされていないようで、私は受付でお願いしていただきました。
通常は駅などでこのパンフレットを見て(見つけて)美術館へ来るってものだと思いますけどね。
今年は参戦できませんでしたが、アルビレックス新潟がFC東京と味の素スタジアムで対戦する日は大抵その前に府中市美術館へ寄ります。いつもピリッとした企画で静岡県立美術館とともに私のお気に入り美術館です。この美術館は京王電鉄府中駅から北東へ約1.4km、府中の森公園の一角にあります。
公園はいつもながら多くの家族連れで賑わっていました。
この日は開館直前でもそれほど混んでいませんでした。
会館時刻前に入り口にいた人は一人だけで私は2人目。着いてすぐ10時になりました。早速入館です。
行くとまず例によって音声ガイドを借りました。300円!他館より安いです。
個人蔵も含め、あちこちから集められたモリスおよび関連芸術家の作品が90点余り展示されていました。
自然を愛したモリスは壁紙に様々な植物を使っています。壁紙はモリスを特徴づける分野のひとつでしょう。
モリスは川の名をつけた作品も多く残しています。S状カーブに花を入れ込んだ「クレイ」はモリスが新婚時代を過ごした地方を流れる川です。
インディゴにこだわったモリスの作品の中でも、この展覧会の目玉である「いちご泥棒」はその典型でした。最初に全面をインディゴで染め、他の色彩を用いる部分は一旦漂白してから色づけしていったということです。幾重にも細やかに塗り重ねられた作品です。
いちご泥棒(内装用ファブリック)(絵葉書)
そうこうするうちに会場はどんどん混んできました。ただ、お昼頃は食事時間のせいかいくぶん隙間もでてきて、ゆっくり観ることができました。
込み合うお時刻は避け、空席ができた13時頃にやや遅めの昼食を摂りました。まあ、月並みなハヤシライスといういことで・・・
この展覧会にはゴム印を使ってさまざまな文様や「いちご泥棒」を作るコーナーもありました。私もチョット遊んできました。
(写真撮影許可済み)
この日は14時から「展覧会講座」がありました。私の目当ても実はこの講座なのです。
音ゆみ子学芸員の「ウィリアム・モリス 美しい暮らし」と題した講座には準備されていた104席を上回る、恐らく120名を越す参加者があり、係員が追加の椅子を並べました。
この講座ではモリスの詩人、職人、芸術家、社会活動家としての歴史と、モリスがいかに伝統と自然を大切にしたかという話を聴きました。
モリスのインディゴへのこだわりについてでは、日本の浮世絵におけるインディゴ、そしてプルシャンブルーの扱いとも比較され、おそらくはここでなければ聴くことができなかったのではないかと思われます。
私のようなド素人にでも理解できるように話されたのはとてもありがたいことでした。
そうこうするうち夕方になり、帰路に着きました。駅までの足はもちろん「ちゅうバス」(コミュニティーバス)です。
ちゅうバスで府中駅へ着いた私は、そこからJR府中本町駅まで歩き、JR南武線、東急東横線、JR横浜線、JR東海道新幹線経由で帰宅しました。
ウィリアム・モリスは社会主義者でもありました。彼はマルクスの影響を十分に受けてはいますが、マルクス主義者であったかどうかはわかりません。音学芸員は「モリス独自の社会主義」(あるいはそれに類する言い回し)と言われていました。
しかし、産業革命とともに階級が明らかになり、経済中心に大量生産が進む一方「職人の技術」が否定され、失われ、「美しいもの」が忘れ去られようとしている社会に大きな矛盾を感じていたことは確かです。
そしてそれはモリスの主導する「アーツ・アンド・クラフツ運動」に象徴されるのではないかと思われます。
それは、私たちの命を守るべき保健や医療、福祉ですら経済中心に仕組まれ、開発の名の下に自然が破壊され、大量生産のゆえに優秀な職人が捨てられていく現代日本にも通じることかもしれません。
この展覧会は12月1日まで開催されています。
あと2週間を切りました。モリスに関心のある方は急ぎましょう。
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