昨日の福岡の中学校のはなし。

引き続き昨晩のテレビでも放送されていたので、その内容をシェアしたい。

現在、2年生に問題児が何人かいて、学校全体を揺るがす事態にまで発展しつつあるというその中学校。

日に日に状況は悪化するという中で、先生たちは諦めずに知恵を絞って生徒たちに向き合おうとするのが前回までの内容だった。

今回は、保護者を巻き込んでの話に展開する。

卒業式だったか何かの行事の時だったか忘れてしまったが、ともかく保護者を招いての体育館での行事の最中、何人かの生徒が先生が話をしているにも関わらず外に出て行ってしまった。

そしてその様子を不安げに眺める保護者たち。

校長先生は行事の最後に、「これが本校の現在の実態です」と保護者を前に現状説明を始めた。

そして、親御さんたちの協力、意見を是非頂戴したいと言う。

数日後、自分の子どもが通う学校の現状を目の当たりにして不安になった保護者の呼びかけで緊急PTA会議が開かれることに。

保護者からは、指導が甘い(と思われる)先生たちに対して厳しい意見が相次いだ。


「できる努力は一生懸命しているけれど、現状はそれを越えた事態に発展している。圧倒的に人手が足りない」。

「体の大きい先生が生徒を力ずくで押さえつけるのは簡単。でもそれをしてしまうと『体罰だ』と言われ、今の時代それはできない。時間をかけて生徒たちの心の中に入っていくしかない」。


学校側はそう説明し、そしてある女性英語教師はこう言った。


「打てる手は出し尽くしています。こんなことを申し上げるのは本当に恥ずかしいのですけど、保護者のみなさんの協力が必要です。お願いします」。


さぞかし悔しかったのだろう、情けなかったのだろう。英語教師の目には涙が浮かんでいた。

見栄もプライドもかなぐり捨てて、先生も保護者もお互い本音をぶつけた。

そして、ここで一つ決まったのが、「保護者が校内を巡回する」というもの。

時間のある保護者が交代で校内を歩き、まずは現状をよりよく理解しようということのようだった。

授業中にも関わらず廊下でフラフラする生徒を目の当たりにし、保護者の顔には驚きの表情が浮かんでいた。


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一方、別の男性教諭のはなし。

ある生徒が試験中に教室を飛び出し、グランドでひとり座っている。

早速女性教諭が駆け寄るも、彼女の話にまったく耳を貸そうとしない。

そこへこの男性教諭が現れ、何をするかと思ったら、何もしないのだ。

正確に言うと、その生徒の後ろに座って黙って本を読み始めた。

しばらく静寂に包まれた後、生徒から口を開き始め、先生も応える。

そして、生徒はその教諭に促され、教室に戻っていった。


その男性教諭は、これまでの経験で無理に教室に連れ戻すよりも、辛抱強く相手から働きかけてくるのを待った方が効果的であることが分かったと言う。

それと、この先生が生徒たちと世間話をよくしていたシーンが印象的だった。

勉強がどうのこうのより、生徒の身の回りの話を意識的にしていたように見える。


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この番組見ていて大事だと思ったことが二つある。

一つは、一人でできないことは周りを巻き込んで解決を図る、ということ。

そしてもう一つは、相手の身になる、ということ。

今回の場合、一人というよりも学校という組織の中の話だけど、でも学校内で解決できないとなったときに、外に広く意見を求め、保護者の協力を取り付けることで解決を図ろうとしていた。

ビジネスでも、ひとりでするより仲間とチームで動いた方が成果が上がる。

もう一つの方は、結局「強制」からは何も生まれないということだ。

生徒を力ずくでおさえたところで本質的な解決にはつながらないわけで、相手の心を尊重し、相手の身になった指導が結局近道だということ。

なにしろ時間がかかり忍耐力が要求されるので、ビジネスの世界でもこれができる人はなかなかいない。


しかしそれにしても、先生がグランドで本を読み始めたのは本当に驚いた。


みな悩み、それぞれの問題に日々立ち向かっている。