名古屋第一法律事務所 お知らせ・ニュース
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【弁護士北村栄の連載vol.10】今こそ有用な再審法の制定を!

今こそ有用な再審法の制定を! 

-無実のままに刑に処せられた多くの人に思いをはせよう-

 

 一昨年の袴田事件、昨年の福井女子中学生殺人事件に続いて、本年2月25日には滋賀の日野町事件が最高裁で「再審開始」となりました。

 このように、近時いくつもの再審が開始され無罪判決が出されていますが、ここに至るまで長期の時間がかかっており、再審制度の不備もあって、制度の見直しが大きな世論となっています。そのためこの間再審制度の見直しが法制審議会で検討をされてきましたが、そこには大きな問題があることが分かりました。

 そこで、今回は、現在の再審制度の問題点や議論の状況についてわかりやすくお伝えしたいと思います。

 

 

Q:冒頭の日野町事件とはどんな事件なのでしょうか。

 

A:1984年に滋賀県日野町で発生した殺人事件で、犯人とされた阪原弘さんが一旦は自白に追い込まれましたが、裁判で無罪を主張し最高裁まで争いましたが、2000年に最高裁で有罪の無期懲役が確定しました。
 その後阪原さんは亡くなり、遺族が2012年に第二次再審請求を行い、大津地裁、大阪高裁でも「再審開始」が認められ、今般最高裁で確定となりました。この間、再審請求を行ってから14年が過ぎました。

 

 

Q:再審開始の原因は何だったんでしょうか。

 

A:捜査機関が証拠として提出していた写真につき、再審請求中にそのネガフィルムが開示されたのですが、そこから、写真の順序が入れ替えられて、さも阪原さんが経験した犯行を再現したかの如くねつ造されていたことが明らかになったのです。

 

 

Q:それは酷いですね。そう言えば袴田事件も捜査機関のねつ造ありましたね。

 

A:はい、味噌樽から発見された5点の衣類は捜査機関のねつ造だと裁判所にも認定されました。福井の事件も、被告とされた前川さんにアリバイがある証拠があるにもかかわらずそれを出さず、検察官も知っていたのに有罪の証拠として弁論し、裁判官からも強い非難をされています。

 

 

Q:その上、無罪となるまでものすごい期間がかかっていますね。

 

A:その通りです。袴田事件では、事件から無罪判決まで58年、福井の事件でも39年と、当時20歳の前川さんは還暦を迎え、大半の人生を奪われてしまいました。

 

 

Q:何故そのようなことが起きるのでしょうか。。

 

A:その根本の問題は「再審制度」の不備にあります。再審制度は大正時代に作られたもので、戦後もほぼ改正されることなく100年を超えたまま現在に至っています。

 

 

Q:再審制度見直しの動きはあるのでしょうか。

 

A:はい、複数の再審無罪判決が出たことで、世論の声が大きくなり、国会では超党派の議員連盟が作られ、議員立法でこの問題の解決をしようとの動きが出ています。

 

 

Q:その議員立法の改正のポイントは。

 

A:まず、弁護団の求める証拠の開示の制度化です。現在は通常の裁判でも検察官の持っている全ての証拠は開示されず弁護士も裁判官もどんな証拠があるか知りようがないのですが、再審では裁判所が開示を求める根拠になる法律すらない状況となっています。
 2つ目は、再審決定が出された場合の検察官の不服申し立ての禁止です。この間、裁判所がようやく再審決定を出しても、証拠を隠しねつ造をしてきた捜査側がどの事件も不服申し立てをして再審を阻んできました。このため、再審無罪までに長期の時間が経過したり、名張毒ぶどう酒事件などえん罪被害者が救われない状況になっています。
 3つ目は、審理を行う際のルール作りです。現在は、再審の審理の進め方について、裁判所は三者協議すら開く必要はなく、どういった手順で、いつまでに審理を行うのかすら決められていません。そのため、再審請求をしても十数年かかって棄却されたとか、塩漬けにされ審理すらされなかったという事件が多数となっています。

 

 

Q:そのような大変な問題があるのに国(法務省)は何もしないのでしょうか。

 

A:世論に押され、やっとここにきて法務省は再審制度の検討のために「法制審議会」(法務大臣の諮問機関)を立ち上げましたが、その委員の構成は元検察官などの法務官僚が大半を占め、学者も再審に関わったことがない人たちばかりで、改正を目指す日弁連の委員は2名程度と、圧倒的に法務省・検察の都合のいい結果を出す人選となっています。
 そして、本年2月12日にその法制審議会が再審制度の見直し案(答申)を提出しましたが、それはとんでもない内容のものでした。

 

 

Q:どんな内容だったのでしょうか。

 

A:非常に問題がありますが、大きく言って問題点は四つです。
① まず、スクリーニングの導入です。再審請求された段階でそれを審理するかしないかを決めてしまうもので、いわゆる門前払いを可能にするものです。
② 次に、証拠開示の範囲を著しく制限をしています。再審請求の際には新証拠を提出しなればなりませんが、検察側にはそれに直接関連するもののみ開示を認めるという、現在よりも狭めた内容となっています。例えば、先の福井の事件では新証拠に関連はしていない証拠によって目撃証言が間違っていたことが分かり決め手になったものですが、法制審の案ではこれらの証拠は隠され続けることになります。
③ 「再審開始」決定に対する検察官の不服申し立てが禁止されていません。これまでの再審制度の一番大きな問題が、時間がかかりすぎることだったのですが、これでは無為に時間が浪費され、冤罪えん罪被害者やその家族、知人の苦しみが長引かされるだけになります。
④ 開示された証拠の「目的外使用」の罰則付き禁止が明示されています。裁判以外には使ってはならないとのことですが、この制限は非常に問題です。弁護団だけでなく、支援者やマスコミが証拠の情報を知ったからこそ、袴田事件では5点の衣類の不自然さが解明され無罪に結びついたからです。

 

 

Q:これをみますと、現状より酷い案との思いを強くしますが。

 

A:その通りです。法制化はこれからですので、ぜひ関心を持って冤罪えんざい被害者の真の救済になるよう監視していきましょう。

 

 

【弁護士北村栄の連載vol.9】高市自民党の圧勝による憲法9条の改正は

高市自民党の圧勝による憲法9条の改正は 

-わずか80年前の6500万人の死者を忘れてはならない-

 

 本年2月8日の衆議院総選挙において高市自民党が316議席を獲得し、定数465の3分の2を超える68%を占めました。選挙から一夜明けた高市首相は「国民の信任をいただいたと受け止める」と白紙委任状をもらったかのような強弁をした上で、特に「憲法改正案を発議し、少しでも早く賛否を問う国民投票をおこなう環境を作りたい」と初めて国民投票にまで踏み込みました。まさに風雲急を告げています。

 そこで、今回は、自民党や改憲勢力が圧倒的多数の中、憲法9条の改正がどうなっていくのか、私たちは何をなすべきかについてわかりやすくお伝えしたいと思います。

 

 

Q:総選挙の結果には本当に驚きました。マスコミもここまでの自民党の圧勝を予想しているところは少なかったと思いますが。

 

A:護憲派と言われる立憲民主党(中道改革連合に合流)の議員の多数が落選しました。本当に残念ですが、有権者の多数が自民党に票を入れたというものではないのです。

 

 

Q:と言いますと。

 

A:実のところ、この選挙で自民党が得票したのは比例区でも36%にすぎず、比例の得票数でも自民党と中道改革連合の票の割合は2:1に過ぎません。
 そして、小選挙区に限ってみれば、定数289中、自民は249議席、86.2%にもなるのですが、絶対得票率(有権者数に占める得票割合)ではわずか26.9%に止まります。中道改革連合も11.8%を取っていますが、議席数は7議席しか取れませんでした。

 

 

Q:それは知りませんでした。選挙制度が影響しているのでしょうか。

 

A:その通りです。現行の小選挙区制がこのような多数の死票を作り出しているのです。
 第1党が3割の得票で7割の議席を独占するという制度の欠陥がまさに表れた形となりました。有権者全体では、比例では64%が自民党以外の党を選んでおり、有権者全体では自民は20%台に過ぎないのです。

 

 

Q:ということは、主権者の多数は「高市人気」などに流されていないということですね。

 

A:そこが大事な点です。もう一つ注目すべき点は、高市首相の「憲法観」です。
 高市首相は憲法は「国の理想の姿を物語るものだ」と述べていることです。実際に10年以上前の衆議院の委員会で、高市氏は「憲法は権力を縛るものという考えを私は採りません。憲法は国家に権力を与えるものです。」と述べています。

 

 

Q:それは驚きです。私でも、憲法は普通の法律と違って「国家権力を制限するもの」「国家が権力を濫用して国民の人権を侵害しないように歯止めを掛けるもの」と理解していますのに。

 

A:その通りですね。高市首相は、本来「権力者を縛るべき憲法」を「権力者が国民を縛るための憲法」に書き換えようとしているのではないかと思われます。

 

 

Q:具体的にどんな憲法にしようと考えているのでしょうか。

 

A:2012年に自民党が出した「日本国憲法改正草案」の内容になります。それは憲法の全条項を見直すもので、特に9条については、9条2項を全面的に削除して集団的自衛権を含む自衛権の発動を定め、新たに9条の2を設けて「国防軍」の設置を規定しています。これは現行憲法の平和主義条項を正面から全否定する案です。
 そして、高市氏自身この改正案を「何度も何度も読み直して、もっとも好きなものなんです」と述べています。
 従って、この自民党の12年草案がこれからの改憲諸党派の共同草案になっていくものと思われます。

 

 

Q:自衛隊を明記することや「国防軍」とすることによりどんな変化が起こるでしょうか。

 

A:自衛隊が軍隊と同じ扱いになります。集団的自衛権を使って国際的な戦いに出ていくことが出来るようになるだけでなく、自衛隊員の人数が減れば徴兵制にも繋がることになってしまいます。非常に恐ろしい話です。

 

 

Q:恐ろしいと言えば、高市氏が推進している「スパイ防止法案」もありますね。

 

A:はい、高市氏は情報活動の強化のために「国家情報局」を発足させる方針を示しています。自民党草案にある緊急事態条項が悪用されれば、私たちの人権が制限され、こうした機関が「秘密警察」のように集会や井戸端会議にさえ目を光らせるような暗黒社会が到来する可能性さえ出てきます。

 

 

Q:参議院ではまだ改憲派が3分の2を占めていないので、その点は大丈夫なのではないでしょうか。

 

A:ただ、参議院で保守系野党も取り込めば、最短で年末にも国民投票の発議が可能となりますので全く油断は出来ません。
 この点、憲法学の木村草太教授が懸念するのが、改憲反対議員への圧力です。同教授は「『どっちにしようか」と迷っている議員に、政権の応援団が相当な圧力をかけることは十分に考えられる。ネット上では誹謗中傷のターゲットにされ、心理的に追い詰められる議員が出てくるでしょう」と述べています。
 さらに、国民投票に至った場合も「支持率の高いうちに国民投票に持ち込めば、改憲を事実上の人気投票にしてしまうこともできます。当然、国民投票が否決された場合は高市氏の責任問題になりますから、『改憲案はよくわからないが、高市早苗には続投してほしい』という理由で賛成が広がる可能性もあります」と指摘しています。

 

 

Q:よく分かります。それにしても、あの僅か80年前の6500万人もの死者が出た世界大戦で命を落とした人々が、この現状を見るときにどう思われるでしょうか。

 

A:ただ、参議院で保守系野党も取り込めば、最短で年末にも国民投票の発議が可能となりますので全く油断は出来ません。
 本当にそうですね。私たちが今一番なすべきは、その人たちの思いを胸に刻み、身近な人から始め、多くの人と対話をすることだと思います。
 そして今の私たちに最も必要なのは、小さな頃から我々愚かな人間を温かく見つめる根本的な哲学、ものの考え方を身につけることだと思います。その大きなヒントになるのが私が全力で復刻の労を取った「文明を問い直す」(梅津済美著)です。「我も人なり、彼も人なり」などの梅津先生の魂の叫びにぜひ触れて頂きたいと思います。

 

 

【重要】お昼の営業時間変更のお知らせ

2026年4月1日より、当事務所は下記のとおり電話を含めた窓口の営業時間を変更させて頂くことになりました。11時50分~12時50分の間は外部からのお電話が繋がりません。

ご不便をお掛けいたしますが、何卒、ご理解賜りますようお願い申し上げます。

 

【変更後の窓口営業時間(電話応対を含みます)】

平日 9時30分~11時50分

   12時50分~17時30分

 

 

 

 

【弁護士北村栄の連載vol.8】原発の安全性に大きな疑問!

原発の安全性に大きな疑問! 

-中部電力の浜岡原発「地震動」データねつ造事件-

 

 本年1月7日に、中部電力浜岡原発の再稼働に向けた安全審査で「前代未聞」の不正が発覚しました。原発で予想される地震の揺れについて、中電がデータを都合良く操作していたのです。問題の浜岡原発は、世界で一番危ない原発とされ、事故が起きたときの被害はとてつもないもので、それ故2011年の東日本大震災の時に、当時の菅首相が運転を止めたくらいのものです。

 そこで、今回は、このデータ不正事件とはどのようなものだったのか、また、この事件は今後どのような影響を及ぼすか、原子力規制委員会に問題はなかったか等についてわかりやすくお伝えしたいと思います。

 

 

Q:ニュースで見ましたが、事件が明るみになったきっかけは何だったのでしょうか。

 

A:中部電力が有する浜岡原発において、再稼働に向けて原子力規制委員会(以下「規制委」という)の審査を受けている中、昨年2月に中電が地震の揺れのデータについてねつ造、改ざんしているとの外部通報(公益通報)が寄せられ発覚しました。ただ、規制委も1年も前に情報を得ながら中電の発表までこの情報を公表せずにいました。この隠蔽は中電に対する忖度だけでなく、11月に再稼働が予定されていた柏崎刈羽原発や、同じく12月に再稼働予定の北海道の泊原発への悪影響を避けるためだった思われます。

 

 

Q:「前代未聞の不正」「暴挙」「安全規制に対する挑戦」とのことですが、中電はどんなことをしたのでしょうか。

 

A:原発が事故を起こさず安全に運転するためにいくつかの審査基準がありますが、その中でも最も重要なのが原発が耐えられる揺れの強さを定めた「基準地震動」のデータをねつ造、改ざんしたのです。
 この「基準地震動」というのは原発の耐震設計の全ての出発点となるもので、最も重要なデータになります。

 

 

Q:具体的にはどんな不正をしたのでしょうか。

 

A:基準地震動は一般的に1つ1つの地震ごとに20通りの揺れを試算し、その中の平均に近い揺れ「代表波」から選ぶのですが、中電は「代表波」を自分らに都合の良い、本来より小さくなるように恣意的に選定していたのです。

 

 

Q:それはひどいですね。

 

A:規制委の山中委員長も「前代未聞の事態だ」、「暴挙だ」、「安全を破壊する」、「信頼に値しない会社との認識が持たれることは十分納得出来る」と感情をあらわにし、審査は「白紙」とし、再稼働を不許可とする可能性も示唆しました。

 

 

Q:当然だと思います。それに、浜岡原発は世界で一番危ない原発なんですよね。

 

A:そうです。浜岡原発は南海トラフ(プレート境界型巨大地震)の震源想定域の真上に位置しており、巨大地震・津波リスクが最も高い施設なのです。
そして、交通・物流の要である東海道新幹線、東名高速道路、新東名高速道路、国道1号線なども通っており首都圏と結ぶ要所にあります。また、西風が吹くことから首都圏への影響が大きく、首都圏3000万人の生命・身体・財産への影響は計り知れません。それ故、東日本大震災の時に当時の菅首相が運転を止めて今まで動かさなかったのです。

 

 

Q:この不正は中電の内部では発見出来なかったのでしょうか。

 

A:中電の報告によりますと、不正は原子力土建部の少なくとも数人が関与し2018年頃から始まったとのことです。そして、昨年2月に規制委に外部通報があり、規制委は5月に中電に調査を要請しましたが、中電の林社長にこの事実が初めて伝えられたのは7ヵ月後の12月でした。
 そして、発覚後の1月5日の会見でも「原子力部門の数名が関与している」との説明にとどまり、自社の調査では経緯や意図などは「まだ明らかになっていない」として、第三者委員会に調査を委ねるとしました。しかし、その第三者委員会も、その委員は規制委の勤務の経験者や原発訴訟で国の代理人として活動していた人です。
 このように、中電の社内では組織の自浄作用は全く機能していません。

 

 

Q:ところで、今回の発覚は外部通報とのことでしたが、審査する機関である規制委はこれまで発見出来なかったのですか。

 

A:そうなんです。これも非常に重要な問題です。
 おっしゃるように、規制委の審査でデータがねつ造されたものだと見抜けなかったことが、より大きな問題だと言えます。すなわち、不正が2018年頃から行われていたのですが、2025年2月に公益通報が寄せられるまで不正を見抜けなかった規制委の審査の課題も浮き彫りになりました。

 

 

Q:それは問題ですね。規制委の審査はどうなっているのですか。

 

A:本来、原発の稼働を巡る審査では、規制委自身がデータを収集・精査して審査すべきなのですが、実際の審査は、正しいデータを事業者が提出することを前提で行われているのです。そのため、規制委は電力会社が提出したデータを審査するにあたり、元データを確認していません。そのため、データのねつ造を見抜けなかったのです。さらにいえば見抜かないために元データを確認しないのだと言えます。

 

 

Q:それは知りませんでした。驚くべきことですね。

 

A:審査資料のデータ書き換えは、今回の中電が初めてではなく、2020年に敦賀原発2号機でも発覚しました。今回の不正のあった地震動評価は他の原発でも使われる一般的な手法ですから、他の原発に同様の事案はないとは全く言い切れません。
 規制委の山中委員長は記者会見で「中電固有の問題」と述べ、また他の原発も規制委自ら調査すべきではと言われても、まずは電力会社の自主的な確認に委ねると発言をしています。
 このように、規制委は電力会社から出されたデータをきちんと審査して結論を出したのではないのです。
 多くの国民は規制委が合格させたのならその原発は安全だと理解しているようですが、そうではないのです。今回の事件でそのこともはっきり分かったと思います。
 安全とは言えない原発の再稼働を容認してはなりません。

 

 

事務所ニュース 2026年1月号

 【2026年1月号】                         

 

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[ 目  次 ]    
『 新年のごあいさつ 』    

『「いのちのとりで裁判」最高裁が生活保護基準引下げの違法性を認める

~国は、至急の謝罪と全面被害回復を!!』
 

弁護士  久野 由詠
『HPVワクチン薬害訴訟をご存じでしょうか』   弁護士  小嶋 啓司

『戦後80年を迎えて』

   「すぐそこにあった戦争」
   「世代を超え、戦争に向き合う」 
『弁護士業務の承継について』
 
弁護士  稲垣 宏子
事務局  小林 和人
弁護士  佐久間 信司

『所内で毎月ランチタイム勉強会を開催!

~人権問題を学び、積極的に取り組むために~』
 
弁護士  北村 栄
『不思議な「国」、日本』   弁護士  加藤 洪太郎
『弁護士奮闘記』   弁護士  村松 健太郎

『ひとりごと53 これからは自給自足の時代

~我が家の家騒動の教訓~』
 
弁護士  野田 葉子

『NPO法人あいちあんきネット主催
 公開セミナー&無料相談会開催のご案内』

『本を執筆しました』               

  「日本社会をリビルドする」
  「働くあなたへ、伝えておきたいこと」
『表紙の写真より』
 


弁護士  川口 創
弁護士  中山 弦
事務局  安田 和仁

 

 
   
     
     

2026年1月に転職フェアに出展しました。

去る1月17日、愛知県名古屋市にあるウインクあいちにて行われました名大社主催転職フェアに、当事務所が出展しました。

 

≪出展ブースの様子≫

 

 

【弁護士北村栄の連載vol.7】議員定数削減、本当にいいの?

議員定数削減、本当にいいの? 

-民意の反映に大きく反する「民意を切る改革」にNOを!-

 

 昨年10月20日に、自民党と日本維新の会が連立政権に際し「基本合意」を交わし、その中で「1割を目標に衆議院議員定数を削減するため、令和7年臨時国会において議員立法案を提出し、成立を目指す」ことが明記されました。

 日本維新の会は、この提案を「身を切る改革」として、連立参加の絶対条件として立法案を国会に出しました。

 しかし、議員定数削減はいくらかの経費削減の意味はあるとしても、最も重要な「民意」が反映されなく、権力の横暴を許してしまうことになります。

 そこで、今回は議員定数削減の問題点を分かりやすくお伝えしたいと思います。

 

 

Q:ニュースでもよく見ますが、提出された法案はどれほど削減するものですか。

 

A:衆議院議員定数を現行の465から45以上削減するというもので、法施行後1年以内に法制上の措置をとるとしつつ、結論が得られなかった場合は自動的に小選挙区25、比例代表20を削減し、定数を420とするというものです。

 

 

Q:それほど削減しなければならない根拠はあるのでしょうか。

 

A:経費の削減と言われていますが、年間35億円程度の削減が見込まれるとの試算はありますが、100兆の国家財政からすれば財政的な効果を殆ど持ちません。
 そして、実際にも、それ以外の削減する合理的な理由は挙げられていないのです。

 

 

Q:日本の国会議員は世界的に見て多すぎるのでしょうか。

 

A:衆議院の調査室の「選挙制度関係資料集」によりますと、主要7カ国(G7)の立法府議員1人当たりの人口は、日本が17万5千人であるのに対し、英国が4万6千人、フランスが7万人、カナダが8万7千人、イタリアが9万8千人、ドイツが11万9千人であるとされており、日本の国会議員1人当たりの人口は、G7の中で最低水準となっています。ですので、日本の国会議員数は国際的に見ても少なく、これ以上削減する合理的な根拠はないのです。

 

 

Q:なるほど。削減をする必要がないことはよく分かりましたが、削減すべきでないとの理由はどんなものですか。

 

A:削減をすると、民主主義においては一番大事な「民意」が反映されにくくなるということです。
 選挙は、民意を国会議員の議席に反映させることを通じて民主主義を実現する制度ですが、選挙制度のこのような本質からすれば、できる限り民意を反映させる制度とすべきです。しかし、定数を減らしてしまうと、国会において民意の反映が後退するうえ、今回は比例代表選挙の議席が削減の対象として狙われていて、より影響が大きいのです。

 

 

Q:比例の議席の削減が大きな影響があるというのは?

 

A:小選挙区選挙は死票が多く、民意を反映させる機能は乏しいのに対し、比例代表選挙は、死票が少なく民意を反映させるという機能を強く持っているからです。
 実際に、2024年10月に行われた衆議院議員選挙では、全国の死票の数は2800万票(小選挙区得票の52%)を超えていたと報じられており、選挙制度を改定し、より民意の反映をさせやすい選挙制度とすることが急務となっています。
 このような状況下で、より民意を反映させやすい比例代表選挙の議員定数を減らすことは、民意を反映させる制度とするべきという選挙の本質的要請に反するものであり、到底認められないのです。民意が反映されにくい選挙制度は、政治に対する国民の不信や無関心を助長させるものですので、是正されなければならないのです。

 

 

Q:その他にも問題はありますか。

 

A:はい、国会が持つ内閣を監視する機能も減衰することになります。
 国会議員は憲法第43条で「全国民を代表する」と定められており、全国民の代表として行政を監視する役割も担っています。また、議院内閣制の下、与党の国会議員のうち一部は内閣に所属しない与党議員も行政の活動を支援する立場にあり、実質的には野党の国会議員が行政監視機能を担うことになっています。
 第一次高市内閣では、大臣、副大臣、政務官、総理大臣補佐官の合計は80名以上ですが、議員の議席を減らすとなれば、内閣に所属する議員の割合が増えるとともに、相対的に野党議員の議席数が減り、国会の行政監視機能が弱まることが懸念されます。

 

 

Q:それは困りますね。しかし、周りを見ますと「経費削減」「身を切る改革」の言葉に踊らされて削減を支持する声が多いように思えますが。

 

A:困ったものですね。これまでお伝えしたことがまだ国民のみなさんに十分届いていないと思います。
 一般の国民の思いは、特に自民党議員の裏金疑惑や汚職など、国会議員がその地位を利用して私腹を肥やし、国民の為に活動していないことに端を発した、国会議員が国民の収入に比して高い国会議員歳費等を受領していることに対する政治家不信の現れであると思います。
 しかし、定数を削減したとしても、国会議員が身を切ったことにはならないし、これによって国会議員の裏金問題や汚職がなくなることもないのです。

 

 

Q:よくわかります。

 

A:ここでよく理解しなければならないことは、国会議員定数の削減、特に比例代表選挙区の定数の削減で最も影響を受けるのは少数政党だということです。
 一般に少数政党は国民の少数者の民意を代弁し、与党の裏金や汚職の問題を追及することが多いことからすれば、国民の多数が削減に賛成しているからといって削減をしてよいということにはなりません。むしろ、議員定数の削減は裏金や汚職の問題の追及を弱めることにつながりかねないのです。国会議員の定数削減は「身を切る改革」ではなく、一番大事な「民意を切る改革」に過ぎない、というべきでしょう。

 

 

Q:「身を切る改革」というのであれば、裏金や汚職に繋がりやすい企業献金や政治資金パーティーなどを規制すべきではないでしょうか。

 

A:そのとおりですね。実際にこの議員定数削減が出されたきっかけは、企業献金など政治と金の問題で自民党が曖昧な姿勢を取ったことで公明党から三行半を突き付けられた後、維新の会が政治と金の問題を隠すように持ち出してきたものですからね。
 実際に高市首相は、党首討論で、企業・団体献金の見直しについて問われた際、「そんなことよりも」と定数削減に話題を変えました。
 私たちは、問題の本質をしっかり見抜いて、声を上げていかねばなりません。

 

 

所内向けランチタイム勉強会(第7回)を開催しました。

 当事務所では、ランチタイムを活用して人所内向け勉強会を定期的に開催しています。
 

 今回は、その第7回目として1月20日(火)に小林竜瑠弁護士より『ブラックバイト問題から見えてきたこと』をテーマに勉強会を行いました。

 

【企画案内】愛知県弁護士会主催『日本のコメが消える日~真の安全保障とは~』

 2026年2月14日(土)に、愛知県弁護士会にて『日本のコメが消える日~真の安全保障とは~』が開催されます。

 対談は、当事務所の野田葉子弁護士が務めます。

 

 奮ってご参加ください。

 

【企画概要】

『日本のコメが消える日~真の安全保障とは~』

・日時:2026年2月14日(土)13時30分~16時(13時開場)

・会場:愛知県弁護士会会館5階ホール(オンラインもあり)

・参加費:無料

・主な内容:(第1部)東京大学特任教授・名誉教授 鈴木宣弘氏による基調講演 (第2部)対談

・主催:愛知県弁護士会

その他、詳細・申込方法は以下のチラシをご参照ください。

 

 

 

 

【弁護士北村栄の連載vol.6】今こそ正念場、平和への希求を前面に

今こそ正念場、平和への希求を前面に 

-ここまで来ている高市政権の軍拡の足音-

 

 新年明けましておめでとうございます。

 今年もよろしくお願い致します。

 念頭に当たって、今年も一番重要な平和の問題を取り上げたいと思います。

 昨年10月、石破政権が退陣し高市政権が登場しました。これまで連立していた公明党が離れ、その後維新の会と連立を組むことなどで、歯止めがなくなりました。

 そして、11月にはあの問題となった国会での高市氏の「存立危機事態」発言がありました。さらには、スパイ防止法の制定、防衛費の大幅増額、非核三原則の見直しなど、止まるところを知りません。

 そこで、今回はその現状と、何が問題かを分かりやすくお伝えしたいと思います。

 

 

Q:高市政権が誕生してから、大変なことになっていますね。

 

A:そうなんです。一昨年秋の総選挙で与党が過半数割れし、また昨年の夏の参院選挙でも過半数割れして、憲法改悪の動きが鈍ったと少し安心感がありましたが、事態は憲法が改正手続きでなく、強引に実態面から変えられようとしてきています。

 

 

Q:私もそれをひしひしと感じています。まず、あの高市発言の問題性を分かりやすく教えて頂けますか。

 

A:はい。高市首相は、台湾周辺で中国軍が海上封鎖を行った場合について、「戦艦を使って武力の行使を伴うものであれば、どう考えても『存立危機事態』になり得る」と断言したのです。さらに、「米軍が来援し、それを防ぐために武力行使が行われる」というシナリオまで具体的に語ってみせました。

 

 

Q:「存立危機事態」とはどんな場合ですか。

 

A:「存立危機事態」とは、日本と密接な関係にある他国への武力攻撃により、日本の存立が脅かされ、国民の生命、自由、幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある事態を指します。これは、2015年の安全保障関連法で新設され、この場合には集団的自衛権の行使(我が国そのものが攻められていなくとも自衛隊が外に戦争しに行くことが出来る)が可能となります。

 

 

Q:よく分かりましたが、高市発言のどこが問題だったのでしょうか。

 

A:この「存立危機事態」には「他国」という要件がありますが、「台湾有事」を念頭に置いている高市首相の発言を素直に聞けば、「他国」とは「台湾」と理解されます。
 しかし、台湾は独立国でなく、中国の一部であると国際社会では理解されていますし、中国自身はもちろんのこと、日本もアメリカも公式ではそのような理解をしています。その中で、台湾を独立国としてその応援のために自衛隊が武力行使に出動すると述べたのですから、大変なことになったわけです。

 

 

Q:中国からすれば、自国の国内のことだから「内政干渉」になるわけですね。よく分かりました。しかし、何故高市首相がこのような発言をしたのでしょうか。日本政府として「台湾」を独立国として認めていないことは分かっていたのでしょう。

 

A:真相が不明な部分もありますが、高市氏は、自民党の中でも強い右翼寄りの考えを持った人で、それが首相になって出てしまったのでしょう。「どう考えても・・・なり得る」という言い方からも推測されますが、もっと慎重であるべきだったと思います。

 

 

Q:中国は大きく反発し、いくつかの制裁措置をとったわけですが、我が国の世論はどうでしたか。高市発言への批判の声がさほど聞こえてこないのですが。

 

A:そうですね、そこが問題ですね。高市発言については賛同する声が多く、またこれにより内閣支持率も高まるという現象もみられます。さらには、高市発言の質問者である立憲民主党の岡田議員の方を非難する声もかなりあります。

 

 

Q:怖い世の中になりましたね。特にネットの投稿には酷いものが多いですね。

 

A:それに拍車をかけているのは、政府べったりのTVのコメンテーターの発言です。落語家の立川志らく氏は「なぜ高市さんをそこで非難するのか。中国が言ってくるのは分かるんです。ただ日本でもそういう人がたくさんいるということは、あなた方はなんで?日本人じゃないの?という気すらする」とまで述べています。戦前を思い起こさせます。

 

 

Q:「台湾有事」は起きるのでしょうか。

 

A:私としては、起きることはないと思っています。「台湾有事」とは、アメリカが台湾と中国の紛争に台湾の援護で武力行使をする事態を考えられていますが、アメリカは今のトランプ政権にみられるように、自国の人的・物的な犠牲を払いたくないと考えています。武力行使に出ることは、自国の兵士(若い国民)の命の犠牲を払うだけでなく、大軍事力を持つ中国のミサイル反撃等で、米国本土等に多数の死者を含む被害が出ることは絶対にしないと思うからです。これは日米安保も同じで、アメリカは自分らの命を張って日本を守ることはしないと思います。
 ただ、アメリカは、高い武器を売って利益を得たいために、一定の緊張感を作り出すことはするわけで、それに乗せられているのが日本政府です。

 

 

Q:なるほど、よく分かります。そうなると防衛費も膨らみますね。

 

A:その通りです。実際に、高市首相は防衛費を国内総生産(GDP)比2%へ引き上げる目標を、2年前倒して本年3月末までに実現するとしています。

 

 

Q:国民が物価高にあえいでいるのに、とんでもないことですね。

 

A:その他にも、非核三原則の見直しも表明しています。
 非核三原則とは「核兵器を持たず、作らず、持ち込ませず」という原則ですが、「持ち込ませず」について見直しを表明し、被爆者団体等からの強い批判が出ています。

 

 

Q:従来の自民党政権も堅持してきた非核三原則に手を付けるとは驚きました。

 

A:さらには、日本維新の会との連立政権の合意書で、今年の通常国会での「日本国旗損壊罪」の制定を掲げています。これは、表現の自由や戦前の天皇制の下、国旗に対する様々な思いを考えた上で、現在の刑法でも犯罪に問わないとされているものを処罰するものです。国や公共団体の国旗を毀損する行為は器物損壊罪で処罰されるので十分なのですが。

 

 

Q:本当に軍拡の足音が聞こえ、戦前のような状況になっていますね。

 

A:これから最も危険なものは、スパイ防止法(現代の治安維持法)の制定です。 これは、昨年のQ&Aで詳しくお伝えしましたが、国民の表現・思想良心の自由を奪い、 言論を抑圧し国民を監視下に置く非常に危険なもので、絶対に阻止する必要があります。
 まさに、今年は平和で二度と戦争や人権弾圧のない世の中を作る正念場の年です。 未来を見つめ、共にがんばりましょう!

 

 

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