因果律は、ある状況を単純化し、体系的に理解するための道具として進歩してきました。因果律によって、目の前の状況の本質を大まかにつかむことができます。これは、物事には必ず原因があって結果があるという考え方です。「何か結果があるとしたら、それには必ずひとつ原因があるとする。」といった具合です。

 

 しかし、詳しく見ると、ひとつの結果の原因は正確にはひとつではないことが多いです。複数の原因が交差している、あるいは連なっているのが普通です。

 人間は日頃、状況に対する見方、考え方を臨機応変に変えています。その場の状況で何をすれば直後の利益が最も大きくなるかを判断して、次の行動を決定することが多いのです。だから、人間は、因果の連鎖のなかでも、自分の力で操作しやすい部分に注目しやすく、脳がそのように進化しているのだろうと思います。


 原因のなかでも、固定されていて自分の力で変えられないもの(物理法則など)については、無意味なのではじめから除外して考えます。人間が自分の力で制御できない要因でも、その結果が予測できるもの(たとえば、風が吹けば、りんごが落ちるなど)は注目するだけの価値があります。

 

 あらかじめその結果に備えておけば、それを利用して利益を得ることや、危険を避けることが可能だからです。


 因果関係は現実には複雑ですが、どうしてもそのことは忘れられがちです。原因をひとつに限定するほうがわかりやすく、話がおもしろくなりますからね。

 

A photorealistic image of a panda deep in thought. The panda is sitting down with one paw resting on its chin and a contemplative expression on its face. The background is a lush bamboo forest, with sunlight filtering through the leaves, creating a serene atmosphere.