今日は午前中、契約指導のミッション。これから商談を進めていく代理店契約の作戦を練るお手伝いです。

契約の仕事は、出来上がった合意事項を書面にする仕事だけでなく、契約前にどのように相手方と話を進めていくか、いわば参謀的とも言える仕事もあります。

その際に契約書のひな型を使いながら、各条件をどのように設定するか、作戦を練っていきます。代理店契約の場合は、価格だけでなく、独占販売権を付与するかどうか、それに付随する期間中の最低購入金額設定や保証金について、商品の保証や瑕疵担保責任、保守契約などについても検討します。さらに、契約解除をこちら側からできるように、どのような条項を置かなければならないか、具体的なリスクを想定して条項を考えます。

この説明ですが、今日は「契約書の話だから小難しいこと言われたらどうしようと思っていたけど、分かりやすかった」と言ってもらえました(^o^)/

どうしても契約書なので、用語が小難しいのはある程度覚悟は必要です。ただそうは言っても、「難しいことをそのまま伝える」だけでは専門家の名がすたると言うものです。

そこで、「例えば、」の登場です。2つ事例をあげてみます。


1.独占販売代理権を与えるかどうか
販売代理店に対し、独占販売権をある特定の地域で与えるかどうか。これを検討する場面がありました。

例えば、独占販売権を与えた販売代理店が、契約後、1年間で全く商品を売らなかったらどうなるでしょうか?

他の会社が同地域で売りたいと言っても、契約期間中は売ることができません。それは困りますよね。

解決案として、最低購入金額の算定期間を1年ではなく3か月、毎月などとする方法があります。販売代理店がノルマを達成できないと独占権を失い他の会社がすぐに販売できるようになるのであれば、収益機会を丸々1年失うということはないでしょう。

あるいは、そもそも独占権を与えないという選択肢も浮上します。関東地方で独占権を与えても、ひょっとしたら中部にも販売できるかもしれません。また、逆に中部地方の独占権をもたせる予定の会社が関東にも売るルートを持っている可能性もあります。そのときは単に「エリア代理店」という位置付けで、販路は独占権を与えず、地域を問わず販売できるという扱いの方がお互い良いかもしれません。

このような枝分かれの選択肢をいくつか持ちながら契約交渉に臨むと、多くの方は自信がついて、相手方と堂々と話ができます。

これ、「例えば」と事例を入れないともやもや情報が流れ去ってしまい、結局独占か非独占か、どちらが自社によいのか決めかねてしまうことになりかねません。

2.営業秘密のマル秘マークについて
契約書上に「秘密である旨を表示」したものを秘密情報とするとあります。例えば、これは「マル秘マーク」が有名ですね。実際に機密扱いの書類を外部に見せるときに「マル秘」をつけると思いますが、(これまた例えば)ファックスで送信する場合に、カバーレター1枚だけではなく、5枚全部につけていますか?←そうでない場合も多いので、よくネタにしています。この話をすると、「おい、そう言えばうちの書類どうなってる?」などと具体的な行動を促すことができて効果的です。

特に用語が難しい契約書だからこそ、契約書の条項と事例をつないであげて、相手に分かりやすく伝える工夫をしています。

(余談)高校生向けに契約や法律の話をよく行いますが、スポーツの反則を例にとって法律の役割を説明します。罰則を置かないとあまり機能しないことも。

「例えば」を使うと、具体的なイメージが頭の中に沸いてきます。今回クライアントを紹介してくださったコーディネーターの方も、「契約書はちょっとね…」と苦手意識を持っている会社に私が適していると思い、呼んでくださいました。

今まで苦手だったことが「わかった!」となるときの笑顔は、本当に嬉しいものです。

契約書というお堅い仕事を通じて笑顔が出てくると、専門家冥利に尽きるというもの。午後の活力にもなります。そして今晩は美味しいお酒が飲めそうです。

みなさまも「例えば」、効果的に使える場面があるかもしれませんよ!