「トイレ掃除」ですが、よく契約の話を分かりやすく理解してもらうために例として使います。多くの子供が「トイレ掃除嫌い」ということで、親子間で「罰」として時々使われます。
例えば、こんな親子間の約束を見てみましょう。
(例1)親子での約束
母:「5時までに帰ってきなさい!遅れたら明日トイレ掃除だよ!」
子:「は~い!行ってきま~す!」
日常の何気ないこんな会話、よくあるのではないでしょうか。トイレ掃除ではなく別のペナルティが置かれることもあります。要は、お母さんが条件付きで子供の外出を認めている会話です。
子供は、5時まで遊びに行ける権利を手に入れますが、5時に家に帰らなければ、トイレ掃除という「罰」が待っています。子ども側から見た場合、次のように整理できます。
権利・・・今から遊びに行ける
義務・・・5時までに帰宅しなければならない
罰則・・・遅れたら翌日トイレ掃除
子供が、この「トイレ掃除」を「絶対イヤ!」と考えると、5時までに頑張って帰ろうとするでしょう。友達と遊んで、どれだけ盛り上がっていても、「いかん!トイレ掃除だけは嫌だ!」ということで、遊びの途中で帰宅しようという気になるかもしれません。それだけではなく、外出するときに忘れずに腕時計を持っていくかもしれません。約束を守ろうとあれこれと予防線を張っておくのです。
契約の世界でも、相手にきちんと義務を履行してもらいたいので、このようなペナルティを置くことがあります。ペナルティがなければ、義務を果たさない可能性もありますからね。多くの場合、金銭で賠償することになるでしょう。まれに、金銭賠償に加えて「謝罪広告」というペナルティも置かれます。名誉棄損でもめて、話し合いの上示談書を交わすような場合、謝罪広告を一つの条件にすることもあるでしょう。
・・・・・・
次に、少しグレードアップ?したトイレ掃除の例を見てみましょう。
(例2)親子での約束「厳しいバージョン」
母:「5時までに帰ってきなさい!遅れたら明日から1か月、毎日トイレ掃除だよ!」
子:「・・・・・・(そんなの嫌だ!)」
厳しすぎる罰則は、契約不成立になる可能性があります。5時を過ぎる可能性があるなら、子供は外出をためらうかもしれません。そして、「なんでそんなひどい条件を出すんだ」と、母親に対して反発することでしょう。こういうことも、親子間の駆け引きですね。
笑ってしまいそうですが、大企業と中小企業との間で交わす契約は、このような「厳しい罰則」が置かれていることが多いですね。むしろ「トイレ掃除」なら金銭的なマイナスはないでしょうから、よほど良心的かもしれません。
契約書を見るときは、自分の側がなにか「やらかした」ときに、どのような罰を受けるのか、よく見ておきましょう。多くの場合、相手方が作成した契約書は、なかなか厳しいことが書かれています。契約ひとつでビジネスチャンスだけでなく大切な財産も失うことがあるので、これから行われる取引を、想像力を働かせて考えてみてください。
契約書を面倒くさがらずに、ぜひ読んでみましょう!