【「鎌倉殿の13人」、実はテーマ上、もう一人主役がいるのでは?】

 

このことに関してはもう、たくさんの方がさんざん述べてるかもしれませんが、あっし、蛍光灯(死語)なりにようやく気付いたことがあるんで、書き留めておきます。

 

本ドラマの主役は言うまもなく義時、なのですが、この話、もう一人主役があるのでは?言わば物語の「語り手」。もちろんナレーションは長澤さんが囁いて(笑)いますが、その意味じゃなくて、ドラマ全体を視聴者にストーリーテラーとして提示する係がいる、ことがうっすら見えてる、というか…

 

このドラマのテーマ、劇中で活躍する、時代を駆け抜けた歴史のヒーロー、御家人たち、和もののドラマでまして大河だったらタイトルの文字が『十三人』でもおかしくないのに、なぜ「13人」と表記されるのか、疑問に思っていました。

 

「13人」という文字列を見て真っ先に頭に思い浮かぶのはやはり「最後の晩餐」。敢えて漢数字書きでなく「13人」タイトルになったのにはこのイメージの重ねがあるのでは?という仮説を妄想したあっし、聖書のあのエピソードがきわめて有名になった背景があの絵画を描いたレオナルド・ダ・ヴィンチの力量であるとすれば、この鎌倉初期の血なまぐさい抗争物語にも、一歩客観的な立ち位置から語る存在が必要なのでは?と考えるに至りました。

最後の晩餐の入館方法、予約方法 | アーモイタリア

もう、もったいぶらないで、もう一人の主役の名を挙げるタイミングだと思います。

 

それは、泰時だろうと思います。

泰時は早い段階から義時のそばで父親の仕事を視てきた、劇中でも「よく見ておけ」というニュアンスのことをよく言われています。まとまりに欠け、事が起きるたびにばらけそうになる坂東の武士団をまとめ、ひとつの力として機能させるために、田舎の小豪族の、収穫高の計算に秀でていただけの次男坊に過ぎなかった義時は、あらゆる権謀術策が渦巻く世界の要(かなめ)役を引き受けざるを得なくなった、そこには綺麗事は通用せず、時に理不尽で強引、悪辣な役回りも引き受ける運命を吞まなければならなかった、時には父親をも、旧知の仲の武将をも、そして自分たちが祭り上げた源氏の血筋さえも、理不尽な方法で歴史の舞台から消し去ることを重ねて行った…

 

ドラマは義時が、この運命を敢えて受け入れて、自らが真黒くなって行くことで社会の安定、言わば光を維持しようと苦心惨憺し、時には目に涙をたたえて無言で深く懊悩(おうのう)する姿を描いています。そしてその傍にはほとんど、自らの父親に激しい疑問や反感、理不尽な思いを抱えながらじっと見つめていた泰時の姿があった…

 

思えば、父親がやろうとしていたことは社会の安定のためには「大きな力」が必要、だからその力のためには権力者が理不尽な非道を重ねるようになる、という、「人治主義」の際限のない悪循環の極みだった、これにほとほと気づいた泰時が、これでは終わりのこない闇を引き受ける人物がいつまでたっても必要になる、これを終わらせるためには「法治主義」に徹するしかない、と気づき行動を始めること、これが本作の血みどろの世界の果てに見出した『最後の光明』だったのかもしれません。だから泰時は「御成敗式目」を制定した、という帰結にするのがこのドラマの世界観だと思います。

 

この意味で、この物語を最後に振り返り、そのまとめをするのは泰時だろうと、あっしはおそらく当たらない妄想を一人、懐に温めております。

 

おそらくは当たらぬ妄想に付き合わせてしまいまして、これをお読みいただいた皆様に、心よりお詫び申し上げます。ただ、義時はおのれの黒くなりゆく様(さま)に十分すぎるほど自覚があり、小栗君もそれを渾身で演じていますが、リアルの現代の世の中には、これに全く気付かない、気づいててもそんな素振りを全く見せずに、法治主義を完全に踏みつぶし独裁に走る者が後を絶ちません。プーチンしかり、習近平しかり、トランプだって選挙捻じ曲げと議会襲撃煽りなどを見れば完全にそいつらと変わるところなどありません。日本だってボーっと生きてるとそういう類いの輩が台頭する時代が来ないとは限りません。すでに隠蔽改竄、役人を忖度でコントロールして正義をねじ曲げるなんて日常茶飯事になってるし。

 

さて人類は、誰をストーリーテラーに立て、この狂った時代をドラマ仕立てにして未来への教訓として残して行ったらいいのでしょう?

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

撫でられるのが気持ち良くて、思わず声が大きくなる猫さん。でもライバル猫が現れると、その行動に可愛い変化が ( *´艸`) | エウレカ! (eureka.tokyo)

こういうノラちゃんって、けっこういますね。