5つのお話からなる短編連作です。
全編を通して軸になるのは、
認知症になった妻・サトミと、
若い頃は好き勝手して暴力まで振るっていた夫・猛夫。
第一章は、父親に人生を狂わされて以来、親とも妹とも距離をおいてきた長女・智代の目線で。
第二章は、親子ほど年の離れた男(智代の義弟)に嫁ぐことになった陽紅の目線で。
第三章は、いい人を装いながらいい人に嫌悪を抱き孤独を募らせる次女・乃理の目線で。
第四章は、夫婦が乗った船で偶然知り合い、夫の想いを聞くことになるサックス奏者・紀和の目線で。
第五章は、自分の娘たちと縁を切ることになった妻の姉・登美子の目線で。
みんながそれぞれ想いを抱えていて、
それが絡まって、グチャグチャになって、
このままこの人たち、どうなるんやろ。
「介護前夜を描いた」と作者が語るこのお話、
私もいろいろと思い出されて苦しくもなりながら読みました。
母は幸い認知症にはならなかったけど、
なんやかんやと後悔が山積みで、
読みながら思い出して泣いてしまったりもしつつ。
ある意味、今はサトミが1番幸せなのかもね。
私、結構登美子好きだな。
冷たいと思われたりもするけど、
人情深いところもあるし。
登美子が思う。
どの人にも事情があって、事情と事情が重なるから世の中厄介になる。
ほんまにそやねぇ。
だから相手を慮るってことが大事なのかなって思う。
智代の同僚が本で読んだと智代に話す「無感動は傷つかないための武器」的なこと。
確かにそうなんだろうと思う。
けど私は、自分を守るために無感動になるくらいなら、
傷ついても感受性豊かでありたい。
ま、ほんとに傷ついたり落ち込んだり悲しんだりは多いけどね。笑
なにせ私、感情線2本あるし。笑
あと、流されて生きてるような乃理の章で、なるほど!と思ったこと。
「仕事も結婚も、好きなだけではできなくて、好きじゃないとできない」
確かにねー、好きなことを仕事にしても辛いことはいっぱいあるし、
でも条件がよくても最初から苦痛なことは仕事にはできないもんな。
結婚だって、好きと生活がバランスよくないと続けていけない。
私は仕事で好きなことと得意なことで迷いながら生きてきてるし、
結婚も好きで一緒になったはずなのに苦痛になって別れたりもしてるし、
このバランスというのは難しいなぁと実感してる。
今はなんとか、どちらもいい具合に乗りこなしてますが。笑