人生を終わらせるつもりの3人の男女が主人公の物語。
全然違うんだけど、乃南アサさんの「しゃぼん玉」を思い出したわ。

由人は子供の頃から母親の愛情を受けずに育った。
引きこもりの兄と、若くして母親になった妹と、母に逆らえずに酒浸りになった父の中で唯一の味方だった祖母が亡くなり、
父の「母さんから離れろ」の言葉で東京の専門学校に入る。
やがてデザイン会社に勤めたものの、
休みもろくな睡眠も取れない激務と、恋人との別れによって、うつを発症する。
潰れそうな会社と恋人への未練から、生きる意味を見失う由人。

一方、由人が勤める会社の社長・野乃花も人生を終わらせる決断をしていた。
若い頃に生んでしまった子供、ノイローゼで逃げてしまった自分、沈んでいく会社。
もうすべてを終わりにするつもりだった。

そんな2人がたまたま目にした「クジラが湾に迷い込んでいる」というニュース。
せめて死ぬ前に見に行こうと車を走らせる。

その道中、2人は女子高生の正子を拾う。
正子もまた、母との関係で心を病んでいた。

辿りついた海辺の町で、3人は何を思い、どう決断するのか。

というお話です。

しんどい時を描いてるところは、ホントしんどい。
読むの嫌なくらい。笑
でも3人が町に辿りついてからは、
ちょっと希望を持って読める。
だいぶ後の方やけど。笑

この町のお婆ちゃんがね、「しゃぼん玉」のお婆ちゃんと重なる。
詳しいことは分からなくても、何かを抱えていることは感じ取り、
でも気付いてない風を装いながら
相手の苦しみにそっと寄り添い、
ただ心を溶かしていく。

3人がこの後どうなるのか。
辛いことがなくなった訳でもないし、まだまだ大変だろうけど
それでも前を向こうと思えたのはよかった。