イヤミスの女王「湊かなえ」さんの作品です。
一応、心理ミステリーと書かれてるけども、
なんていうか、人と人って難しいなって思わせる作品です。笑
登場人物の主観や主義主張がぶつかり合ってて、
みんな人をどこかで見下してたり、妬んでたり、馬鹿にしてたり、怖がってたり。
でも表面上はすごくいい感じに接してて。
そういうのを、いろんな人の目から見るお話。
これぞ人間関係、みたいな。笑
舞台は太平洋を望む美しい景観の港町。
そこには古くから住む人が慎ましやかに暮らしていたが、
その景観に惚れ込んで集まってきた芸術家たちもいた。
今のまま、ふわっとなんとなく暮らしていけたらいいと考える先住人たちと
せっかくこんな素敵な場所、もっとみんなで盛り上げていこうよ!と考える移住者たち。
主人公のひとりで、その町で生まれ育った菜々子は、そんなどちらの人たちの気持ちにも寄り添えず、
それでも何となくモヤモヤしたものを抱えながら暮らしている。
そんな中、移住者たちが中心になって町のお祭りを復活させようという動きが活発化する。
表面上はうまくやっているのだから、先住人たちからもその祭りに手伝いを数名出すことになり、
菜々子はその手伝いに駆り出されるが、祭りで火事が起こってしまう。
幸い、大きな事故にはならなかったが、それは菜々子たちの生活を一変させるきっかけになる。
移住者のすみれの提案で、菜々子の娘で車椅子に乗っている久美香を広告塔にして、「みんなが自由に羽ばたける未来を」という団体を作ることになったのだ。
それは徐々に注目を集め、全国に広まり、話題を集めるが、
ある噂が囁かれるようになって、歯車が狂い出す。
というお話。
どの登場人物も、まったく共感できない人はいないけど、でも完全に賛成できる人もいない。
みんなちょっとずつ自分勝手で、ちょっとずつイラっとする。笑
でもそれが人間なんかなとも思うよね。
なるべく主観ではなく客観で物事を判断しようと心掛けてはいるけども、
やっぱりちょこちょこ主観が顔を出すし、落ち着いて考えられる時は客観に修正できるけど、
その余裕がない時は主観のまま発言してしまったりもする。
でもそういうのは、気付いた時になるべく修正しておかないと、こういうことになるんだなって思ったな。
歯車はひとつ狂い始めたらすぐに止めないと、すごい速さで、そして思ってもみない方向で狂っていく気がする。
心して生きていかねばな、と考えさせられたお話でした。