絆を深めて | 第二回日本の看取りを考える全国大会

第二回日本の看取りを考える全国大会

   自宅幸せ死を勧めていくために

 島にもようよう春の風が感じられる。

里さん(97歳)の唯一の介護者、太郎さん(75歳)。大阪に家族を置いたまま、長男の太郎さんが島に帰り、里さんのお世話をなさってもう7年。長男の役割として、この島に居たいと言う幸齢者様の願いを聞き届けられる太郎さんの凛とした生き方に大きな学びを頂く。

里さんをなごみの里に預けっぱなしではいけないと毎週月曜日、ボランティアに来て下さる。シーツ交換をするスタッフを手伝う太郎さん。車椅子の里さんが寒くないようにと、私はバスタオルを膝に掛ける。しばらくすると、息子さんは少し照れながら温かい電気毛布を里さんの膝に掛けられる。すると、里さんの心に温かい風が吹き、里さんの目から涙が溢れる。

「長生きして良かった。やさしいね」

そう言いながら、息子さんの後姿に手を合わせられる。傍にいる、私たちの心の中まで温かい風が吹くかのように幸せになる。

昼食後、茶碗を片付けて下さる太郎さんに声をかける。

「お二人ともおやさしいのですね」

「いいや。こんな風にありがとうと口にするようになったのは、歩けんようになってなごみの里に入ってからです。もう少し早く優しい言葉をばばが言ってくれたら……」そう言いながら、笑顔があふれていた。

小さな積み重ねの生活の中でひとつひとつ紡がれていく絆。親子の絆を深めて、温かい風を下さった幸齢者様に感謝 合掌