輝きの中に生きて | 第二回日本の看取りを考える全国大会

第二回日本の看取りを考える全国大会

   自宅幸せ死を勧めていくために

 島は今日一日、しんしんと雪が降る。フェリーの欠航を知らせる村内放送が流れる。なごみの里のストーブの上のヤカンがシュンシュンと音を立てる。  
 静さん(93歳)の細い足を温かいお湯の中で洗う。しわだらけの白い足が湯の中に入ると、静さんのお顔がほころぶ。ゆっくりと指の一本一本に私の指を絡ませながら洗っていく。
 「ばあちゃん(こう呼ぶのは御本人の希望)は凄いよね。女手ひとつで二人の子供、立派に育て上げたんだよね。旦那さんが戦争で亡くなられたのが二十代だったんだもんね。本当に大変な時に偉いよね」
 足を温めながら、静さんは何度も頷き、微笑みを返される。なごみの里にお暮らしになって四年、何度も何度も繰り返される光景である。認知症をお持ちの静さんだが、その度に若き輝かしい日に戻られる。
 「ばあちゃんは旅館で一番の働き手だったんよね。女将さんに気に入られて、仕事が何でも出来たからだよね」 「うん。働かせてもらえるところがあって良かったよ。有難いなと思って一生懸命働いたもんだ。女将さんが良い人でな。長いこと使ってもらった」  
 そう言いながら、静さんの心は旅館で働いていた頃の華やかな自分に重なっているようで、そのお顔は輝いて見えた。
 里の外の凍てつくような冷たさとは無縁に、静さんの心はとてものびやかに思える。最期の瞬間まで輝いて生きていたい。最期の輝きの時に、自分の人生は良い人生だったと思えるようにと、今日もそう祈りながら静さんに風のように寄り添う。人は皆、輝きの中に生きていると教える幸齢者様に感謝 合掌