~生きる力を分かち合う~ | 第二回日本の看取りを考える全国大会

第二回日本の看取りを考える全国大会

   自宅幸せ死を勧めていくために

島は穏やかで海は湖のように凪いでいる。

そんな穏やかな早朝だった。福岡に住む義母が逝ったと夫からの電話が入る。

すい臓ガンが見つかり、この3月手術。4つの臓器を切り取る大手術を受けた後、入退院を繰り返しながらも前向きにいつも明るく生きてきた。

面会に行くと決まって「久美子さん。私は死ぬのが怖くない。葬儀の事や細かい事を決めたいのに、みんな本気にしないではぐらかす。あなたならわかってくれるよね」と手を握る、潔く立派な義母だった。

私がなごみの里を立ち上げて直ぐに、病を頂く夫は離島には無い医療の整う実家で暮らし、その事が夫にとっては何よりの親孝行となった。傍にいることの安堵感、時間を注ぐことの尊さ。一日一便のフェリーに飛び乗り、すぐに駆けつけると、何とも美しい義母がそこに居た。その笑顔はまるで起き上がり「久美子さん、ありがとう」といつものように手をとってくれるかのようで、思わず私は「お義母さん、ありがとう」と顔をなでながら、その言葉だけを繰り返し義母に捧げていた。姪達とおしゃれだった義母にイヤリングをつける。スカーフを首にまく。

義母は生前3通の手紙を残していた。それは義母の死後のお別れ会の執り行い等についてのものだった。

お通夜もお葬式も義母が決めていた式次第にそって行われる。会場に義母が言い置いていた「千の風になって」が流れると、葬壇の向こうに義母の大きな笑顔が見えた。次々に会場にみえる人々のその多さに、義母の存在の大きさをあらためて知る。

人は生まれた時に身体、良い心、魂をもらう。この身を手放し、義母は今、子や孫に、そして縁ある人々に義母の良い心と魂を分かちあう。

その身を投げ出し、私達に大きな生きる力をくれた義母に感謝 合掌